中国のここに注目!-中国発、世界株安の行方

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2015/09/30
経済調査部 部長 門司 総一郎


引き続き「中国のここに注目!」です。前回から間が空いてしまいましたが、この間中国経済への懸念にフォルクスワーゲンの不正ソフト問題や新興国・資源国からの資金流出などが加わり、世界的な株安はさらに拡大しました。

 

しかし当コラムは元々「中国経済への懸念は行き過ぎで、これが修正されることにより株式市場は反発する」と見ていましたが、この見方は今も変わっていません。そこで今回はこのシナリオに沿って今後の世界の株式市場の見通しを考えてみます。

 

MSCIオール・カントリー指数

 

先進国・新興国両方の株式市場の動きを反映したMSCIオール・カントリー指数は今年8月中旬に急落。9月に入って落ち着くかに見えたものの、その後再度急落しました。現在は8月の安値を下回り、昨年10月以来の低水準となっています。

 

世界的な株安の背景にあるのは中国経済への懸念と米利上げへの警戒感です。したがってこうした懸念が緩和されることが株式市場が安定を取り戻す条件といえます。

 

その他、新興国/資源国からの資金流出やスイスの大手資源商社グレンコアの資金繰り悪化懸念、また産油国のソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)による株式市場からの資金引き揚げなども悪材料として指摘されていますが、これらは中国経済や米利上げから派生した問題です。そのためこの2つに対する警戒感が薄らげば、自然に解消されると見ています。

 

またフォルクスワーゲンについては、ここまでの株安の一因ではありますが、その経営自体が傾いて信用不安が発生する、あるいは大規模なリストラを行い景気に悪影響が生じるということがない限り、これ以上の株式市場全体への影響は限定的と考えています。

 

中国経済については前回述べたように、強くはないもののこれまでの株安を正当化できるほど弱くもないとの見方です。更に今後については既に政府が実施している景気対策の効果が表面化することにより、中国経済への悲観論は修正されると見ています。中国経済については「中国のここに注目!」の最終回として、次回詳しく取り上げる予定です。

 

米国の利上げについては、米連邦準備制度理事会(FRB)と市場との対話が上手く行っていないことが1つの問題になっています。せっかく9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送ったものの、その後イエレン議長を初めとする関係者から年内利上げを示唆する発言が相次いだため、台無しになってしまいました。イエレン議長の経験のなさが災いしたといえます。

 

年内利上げ観測を煽るような発言は慎み、「海外経済や金融市場の動向を注視する」といっておけば投資家も安心するでしょう。そうなれば市場も落ち着いて、その分利上げ開始の環境が整うはずです。今は苦労していますが、ここでの学習によりイエレンFRBと市場の対話は今後改善、利上げへの警戒感も薄らぐと予想しています。

 

こうして中国経済や米国の金融政策に対する警戒感が薄らぐに伴って、世界の株式市場は持ち直すとの想定をメインシナリオと考えています。中国の経済指標の改善(早ければ10月1日発表の国家統計局による製造業PMI)、FRB関係者の発言の変化(年内利上げへのコミットメント低下)などが回復のきっかけになるとの見方です。

 

逆に世界の株式市場がさらに下落するリスクについては、中国経済の明確な悪化やFRBによる市場環境を無視した強引な利上げなどが条件となります。新興国や資源国の景気低迷をリスクとする見方もあると思いますが、前述のようにこれらは中国経済や米利上げ観測から生じたものなので独立したリスクと考えなくてよいでしょう。また既にこうした国の通貨が相当程度売り込まれていることを見ると、そうしたリスクはかなり市場に織り込まれていると考えることもできます。

 

怖いのは、リーマン・ショックのクレジットバブルや欧州債務危機の周辺国国債バブルのように、どこかにバブルが隠れていてそれが破裂することですが、REITや米国の社債など一部にその候補はあるものの、バブルというほど極端な価格になっているものは見当たりません。また規制により金融機関のリスク・テイクが厳しく制限されており、金融システム不安が起きにくいことを考えてもリーマン・ショックの再来がある可能性は低いとの見方です。

 


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