株式市場見通し(18年2月9日)

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2018/2/9

経済調査部

部長 門司  総一郎

 

世界の株式市場は年初上昇して始まりましたが、その後は徐々に減速、2月に入ってからは大荒れとなっています。今回の「市場のここに注目」は株式市場の見通しについて考えます。

米ダウ平均と日経平均

今回の世界同時株安には3つの理由があると考えています。a.投資家の過度の楽観、b.米国のインフレ懸念と長期金利の上昇、c.「リスク・パリティ戦略」の投資家による株式売却、の3つです。以下、順にコメントします。最初は投資家の楽観についてです。

 

今年に入って米国ではエコノミスト平均の事前予想を下回る経済指標が見られるようになりました。1NY連銀製造業景況感指数、同フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、同ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)などです。しかし、こうした弱めの指標にもかかわらず米国株は上昇を続けました。これは投資家が楽観に陥っており、悪材料を無視したためと考えています。

 

2番目はインフレ懸念と長期金利の上昇です。22日に発表された1月の米雇用統計は雇用者数、時間当たり賃金共にエコノミスト予想を上回る強い内容となりました。この指標を受けてインフレ懸念が台頭、長期金利は上昇。株式が下落するきっかけとなりました。

 

3番目の「リスク・パリティ戦略」は保有する金融資産全体の価値の変動を一定範囲に抑えることを目指した戦略で、リーマン・ショック後に増加したといわれています。債券や現金など価格変動の小さい資産の組入比率は高くなる一方、株式や外債など変動の大きい資産の比率は低くなります。また金融市場の変動が高まる場面では変動量を抑えるため、株式などを売却することになりますが、今回はこの「リスク・パリティ戦略」の投資家による売りが下げを大きくしたといわれています。

 

以上が下落の理由ですが、ここからは今後の見通しについて考えてみます。まず前述の3つの要因についてですが、投資家の過度の楽観は解消されたと見てよいでしょう。また金利上昇は必ずしも株価にマイナスとは限りません。昨年9月から今年1月までは長期金利と株価が同時に上昇しました。これは金利上昇が景気の拡大に伴う「よい金利上昇」と投資家が判断したためです。

 

足元の金利上昇も株価下落の引き金になりましたが、きっかけは待ち望まれた賃金の上昇加速です。投資家が冷静さを取り戻せば、この金利上昇は「よい金利上昇」であり、株式市場を持続的に押し下げるものではないとの見方に変わると考えています。

 

「リスク・パリティ戦略」の影響について自分は既にポジション調整の売りは相当程度が解消したと見ていますが、「高ボラの状況が続けば、月末にさらに株式の保有比率を引き下げる可能性がある」(損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント平松氏、29日付日本経済新聞)などまだ売り圧力は残っているとの見方もあります。

 

ただし、「リスク・パリティ戦略」は市場の変動率に応じてポジションを変えるものであり、自ら長期的な流れを作り出すものではありません。したがって影響は大きくとも一時的なものに止まると考えています。

 

一方景気や企業業績は好調です。1月に発表された米経済指標には弱いものもありましたが、2月に入ってからの米経済指標は持ち直しています。前述の雇用統計の他、ISM製造業景況感指数などの主要月次統計はいずれも予想を上回っています。1月の経済指標の弱さは一時的なもので、米経済は好調を維持しているようです。

 

企業業績も好調です。トムソン・ロイターによれば、昨年10-12月のS&P500採用企業の1株当たり利益は前年比14.7%増が見込まれているとのことですが、これは7-9月の12.0%増を上回るものです。

 

以上述べたように、今回の株価の下落は大幅なものではありますが、投資家のセンチメントや需給などの要因による一時的なものと見ています。一方景気や企業業績などが好調を維持していることから、今後株式市場は徐々に落ち着きを取り戻し、上昇に転じると予想しています。なお、ここまで主として米国株式について述べましたが、日本やその他の株式市場についても基本的に同様の見方です。

 

以上

参考文献:「リスク均衡狙い株売却」(2月9日付日本経済新聞)

 


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