株式需給のここに注目!-買戻しに苦しむヘッジファンド

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2015/11/20

経済調査部 部長 門司 総一郎

 

8月から9月にかけて日本株は大きく下落しましたが、9月末を境に上昇に転じ、足元では日経平均の20000円も視野に入っています。この急回復の理由の1つは外国人、特にマクロ・ヘッジファンド(以下ヘッジファンド)の買戻しにあると考えていますが、今回はこれを取り上げます。

 

ヘッジファンドが日本株を買い戻していると考える理由は2つあります。1つはNT倍率の動きです。NT倍率は日経平均を東証株価指数(TOPIX)で割ったものですが、拡大すれば相対的に日経平均が優位、縮小すればTOPIXが優位にあることを意味します。

 

NT倍率の推移(日次、倍) 外国人の日本株買い越し額(月次、兆円)

 

ヘッジファンドは現物株よりも流動性がある日経平均先物を用いて日本株を売り買いするといわれます。したがってヘッジファンドが日本株を買う場合は、日経平均先物主導で日本株が上昇することによりNT倍率は拡大、売る場合は縮小すると考えられます。

 

今年7月から9月にかけては日本株が下落する中でNT倍率も縮小、ヘッジファンドが日本株を売ったと思われます。逆に10月以降は日本株が上昇する中でNT倍率も拡大していますが、これが10月以降の上昇がヘッジファンドの買戻しによると考える理由の1つです。

 

もう1つは投資部門別売買状況の外国人動向です。現物、先物それぞれについて外国人の日本株売買のデータが公表されていますが、現物のデータは主に年金やソブリン・ウェルス・ファンドなど長期的な投資家、先物はヘッジファンドの売買状況を反映していると思われます。

 

外国人は現物、先物とも6月から9月まで4ヵ月連続で売り越しました。通算の売り越し額は現物で4.3兆円、先物で3.8兆円です。先物は6-7月に1.7兆円、8-9月に2.2兆円とコンスタントに売り越していますが、現物の売り越し額は6-7月の0.5兆円から8-9月の3.7兆円に膨らみました。まずヘッジファンドが日本株を売り、その後長期投資家が売ったことが窺われます。

 

ここまでヘッジファンドはうまく立ち回ったといえますが、問題はここからです。利益を確定するためには買い戻さなければなりません。外国人の先物での取引は10月に買いに転じましたが、金額はわずか129億円です。

 

11月に入って第1週は571億円、第2週は4525億円と買い越し額が膨らんでおり、買い戻しが加速していることが窺えます。この間日本株は上昇を続けますが、特に第2週は欧米株が3%前後下落したにもかかわらず、日経平均は1.7%上昇しました。これがヘッジファンドの買戻しが日本株を押上げていると考えるもう1つの理由です。

 

ヘッジファンドが買い戻しに苦しむのは売り手不在のせいですが、その原因は日本銀行(ETF)、公的年金(日本株組み入れ比率引上げ)、上場企業(自社株買い)などの買いにより株式が吸い上げられてしまったことにあると見ています。いずれも数兆円単位で日本株を購入しましたが、それを簡単には売却すると思えません。そのため、日本株の流動性は以前に比べて低下しているように感じます。これがヘッジファンドが買い戻しに苦しむ背景でしょう。

 

ヘッジファンドは暫くの間、買い戻しを余儀なくされると思います。それだけではありません。長期投資家も日本株を買い戻している模様です。外国人の現物での買い越し額は10月が4630億円。11月第1週は1319億円、第2週は3004億円とこちらも買い戻しが加速しています。

 

ヘッジファンド、長期投資家のいずれの買い戻しもまだまだ続くと思われます。年末にかけて日本株は一段高すると予想していますが、このヘッジファンドなどの買戻しも、日本株の上昇を見込む理由の1つです。

 


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