下落に転じた中国からの輸入価格

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2016/1/28

チーフエコノミスト

柿沼 点

 

<中国からの輸入価格は上昇基調にあったが足許で変調>

2000年代入り後を中心に中国からの安価な製品輸入が日本製品のシェアを奪うと共にデフレの一因ともされてきた。その後、中国での物価上昇(と日本国内の物価停滞)から価格差が縮小していき、近年は円安傾向も相まって中国からの輸入価格は数年に亘って上昇基調を辿り、むしろ日本の物価を押し上げる要因となってきた(図表1)。しかし、足許では中国国内の生産者物価低下、円高元安方向への為替レートシフトなどを受け、昨年12月には中国からの輸入価格がついにマイナスに転じており、今回のテーマに取り上げた。

 

<これまで中国からの輸入物価が強めに推移してきた背景> 

対ドルでの円安が進む中、米国からの輸入物価は上昇傾向にあるが、中国元も米ドルに近い動きとなっていたため、日本の中国からの輸入物価も強含みの推移となっていた。これは通貨安から輸入価格が低下基調にあるアセアン等とは対照的な動きである。

 

また、中国からの輸入価格を主な輸入品別に見ても特段大きな違いは見られず、総じて上昇傾向にあったことがわかる(図表2)。更に主要輸入品の数量の推移をみると、全体として伸び悩む中、食料や繊維品が弱い一方、機械機器輸入の数量は2000年の56倍まで増えている。従って、嘗てに比べて機械機器(情報端末を含む)の価格の影響が大きくなっており、食料や繊維等の圧倒的な価格差のもたらす影響は相対的に後退していると見られる。

中国からの輸入価格は数年に亘る上昇基調

 

<中国からの輸入価格を巡る足許の環境変化>

中国からの輸入品の価格を考える上で重要となるのは①中国国内の価格動向(輸出品は財中心であり、消費者物価よりも生産者物価の影響が大きい)、②円と元の為替レートの2点。まず、①の中国における生産者物価の推移をみると、2012年頃から水面下だったが、2014年からマイナス幅が拡大し、足許では5%を超える落ち込みとなっている。これは中国からの輸出品価格を抑制する効果があるが、過去の動きをみると、②の円元為替レートの説明力が圧倒的に高い(図表3)。

足許で元は通貨バスケットを参照するとしているが、永らく米ドルにハーフ・リンクしてきた(平時の元の対ドル年間変動率は上下4%程度に止まる)ため、円元為替レートは概ね円とドルの為替レート変動を映じて円安方向で推移してきた。しかし、昨年後半以降は対ドルの円安が進みにくくなり、元も対ドルで減価したため、円元レートは昨年年央の20/元程度から、足許で18/元程度まで1割程度の円高となっている。

 

<今後、中国からの輸入物価は低下幅拡大の可能性>

最後に中国の生産者物価と為替レートを説明変数として中国からの輸入物価について一定の前提の下での試算を行った(図表4)。ここでは、中国の生産者物価(足許前年比▲5.9%)、円元レート(足許18/元)が共に横ばいで推移すると想定し、推計式(注)に当てはめた。その結果、中国からの輸入物価は年明け以降マイナス幅を拡大し、春頃に前年比▲7%程度の下落幅になると試算される。試算結果は、円高元安に振れたレートを固定化して仮置きしており、幅を持ってみる必要があるものの、中国経済を巡る不透明感が強い中、中国当局としても急激な元安は避けながらも緩やかな元安は許容すると見られる。

こうした動きが現実のものとなると、中国にとっては輸出収益の改善に資する効果が期待されるが、日本から見ると、中国からの観光客数やその日本国内における消費行動への抑制効果、日本国内の物価押下げ影響などが懸念される。円高に伴う消費財価格の低下は原油価格の低下同様、実質購買力を高めるという意味では「良い物価下落」との評価も可能だが、国内品との競合を恐れる日本企業にとっては望ましくない変化となる。とりわけ2%の物価目標への道筋の霧が依然として晴れない日銀からみると、新たな悩みの種が増えることになる可能性がある。(了)

 

(注)輸入価格(前年比)=1.656.16】+0.518.28】×中国の生産者物価(前年比)

-0.80【-28.41】×円元為替レート(前年比)、【 】内はt値、r20.81

中国からの輸入価格の関連指標

 


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