中国経済減速の波及効果

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2016/6/28

エコノミスト 千代谷 玲子

<中国経済は減速の一途>

中国の成長率の減速が続いている。実質GDP成長率は2010年以降から低下傾向にあり、2014年は前年比+7.3%、2015年は前年比+6.9%と+7%を割り込んだ。成長の内訳を見ると、長らく投資・消費の寄与が同程度だったが、2010年以降は投資が明確に減速している(図表1)。今後も、GDPに占める投資の比率は低下が予想されており、これに伴い成長率も逓減していくと考えられる。

<経済規模は世界第2位>

IMFのドルベースの名目GDPデータによれば、中国は2009年に当時2位だった日本を抜いて、米国に次ぐ位置を占め、その後も米国との距離を次第に縮めている。また、購買力平価でみたGDPでは既に2014年に米国を抜いて世界1位となっている。この様に世界経済におけるプレゼンスが高まっている中国が減速するとなれば、他国に与える影響は相当程度あると懸念される。

 

中国の実質GDP成長率 各国のGDPに占める投資の割合

<減速の影響は増しているか?>

中国経済の減速の影響について、IMFのデータを用いて簡易的に試算すると、各国の成長率の中国の成長率に対する弾力性(1%の低下に対して何%低下するか)は、米国が▲0.43%、ユーロ圏:▲0.31%、日本:▲0.34%となった。これに対して、新興国は総じてより大きな影響を受けることが示唆されており、特に韓国、インド、台湾がそれぞれ、▲0.72%、▲0.71%、▲0.68%となっている。これらの国々は先進国・地域に比べて中国に対する依存度がより高い経済であることが窺える(図表3)。また、主要国経済の世界経済への影響は中国を含めて全体では▲0.40%ポイントとなっているが、この推計は1981年からの長期のデータに基づくものであるため、最近の状況が過小評価されている可能性がある。このことを考慮するため、各国の輸出に占める中国向け輸出の割合の推移をみると、2000年以降総じて中国向け輸出の割合が高まっていることがわかる(図表4)。この背景には、中国が2001年にWTOに加盟したことが挙げられるが、とりわけ、豪州、韓国、台湾、ブラジル、日本などは中国向け輸出の割合が2000年以降急速に上昇している。世界に対し圧倒的な影響力を持つ米国(同試算で▲0.94%ポイントの下押し効果)とまではいかないが、このような各国の中国との貿易関係の深化を通じて、中国経済の減速の影響は図表3に示した推計結果よりも大きくなる可能性がある。

 

成長率の変化が各国に与える影響 輸出〆る中国向け輸出割合の推移

<中国への輸出割合の高い国に注意>

「中国の成長率が低下する」という事態は現に起きているため、随所にみられる中国の減速の影響に留意する必要がある。実際に、名目値であることに注意が必要だが、図表4に示した国のうち、中国向け輸出の割合が高い韓国、台湾では中国向け輸出金額は15年以降減少傾向にある。また、豪州、ブラジル、日本でも中国向け輸出は伸び悩んでおり、貿易を通じた波及効果は現実のものとなっている。また、中国に進出している日本法人の中国国内での売り上げ(香港含む)は2015年度7-9月期に前年同期比でみて減少しており(10-12月期は増加に転じる)、ここからも中国の内需の弱さが垣間見える。また逆に言えば、ここで輸出データや日本企業の現地での売上データをみたように、中国と同時に、中国と経済的つながりの深い国の双方の経済指標を確認することは、中国景気の真の減速度合いを知る手がかりとなる。中国向け輸出の高い国々は中国に対する経済の依存度が相対的に高いため、中国経済の動向に併せてこれらの国々の動きも注視していくことが肝要と考えられる。(了)

 

 


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