2020年度には民間非金融法人も預金超過に?

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2016/6/30

チーフエコノミスト

柿沼 点

<日本の非金融法人は家計を抜いて最大の資金余剰主体に>

リーマンショック後には米国でも非金融法人が資金余剰主体に転じて話題になったが、その後の景気回復に沿ってそうした事態はほぼ解消され、バランスないしは若干の資金不足の状態で推移している(図表1)。一方、日本では非金融法人の資金余剰が常態化しており、足許では家計を上回る最大の資金余剰主体となっている。本稿では、わが国の非金融法人の資金余剰の現状と先行きについて考えてみたい。

<近年の非金融法人の資金フロー>

非金融法人に係る近年の資金の流れをみると、収益と設備投資が共に増加しているものの、依然として多額のフリーキャッシュフローを抱えている(図表2)。こうした資金の使い道としては、対外直接投資(M&A案件も含む)、配当、負債の縮減(社債償還、借入返済)、自社株購入が挙げられるが、実際には金融資産の増加が多くの割合を占めている。こうした状況は、配当支払い後のフリーキャッシュフローほぼ全額に相当する額を自社株購入に充てている米国(Factset BUYBACK QUARTERLYによる)とは大きく異なる。米国では社債発行代わり金で自社株を買うようなケースも多く、やや行き過ぎでは?との見方もあるものの、自己資金で金融資産を積み上げるというわが国の非金融法人の慎重な企業行動が続く限り、設備投資の本格的な回復やそれに伴う潜在成長率の明確な持ち直し等は期待し難い。

部門別資金過不足【日米】 非金融法人の資金フロー

<非金融法人の資金運用では預金と投信が大きく拡大>

図表2は各種統計の寄せ集めであり、時系列をみるには適さないため、次に日銀の資金循環統計のみを用いて、その範囲で非金融法人の資金調達、運用フローの状況を確認した。まず、資金調達フローでは、借り入れがプラスで推移する一方、社債は減少が続いており、株式も足許では小幅のマイナスとなっている(図表3)。もっとも、借り入れも残高ベースでは調整額(償却等)の減少を加味するとほぼ横ばいに止まっている。歴史的な低金利が続いているが、非金融法人の資金調達意欲は総じて高まっていない。


また、資金運用フローに目を転じると、足許では投資信託と預金の増加が顕著である。2015年度の年間増加額は投信:7.3兆円、預金に至っては18.7兆円に上り、同時期の家計における増加額(投信:6.4兆円、預金:7.5兆円)を共に上回り、特に預金増加分における差が大きい。日銀のマイナス金利政策導入後、市場金利は一段と低下しており、貸出需要も伸び悩む中で預金取扱機関は未曽有の運用難に悩んでいるため、こうした法人預金の増加を運用ビジネスに繋いでいくことが引き続き重要な課題の一つになると考えられる。

<2020年度には非金融法人も預金超過主体に?>

歴史的には日本の銀行を取り巻く資金フローは家計預金→法人貸出が中心だったが、法人貸出市場が成熟化する中で各種個人向け貸出や債券投資を増やしてきた経緯にある。しかし、民間非金融法人が保有する預金の残高は2016年3月末時点で235兆円に上り、借入残高との差は年々縮小している(図表4)。前述のように償却等による残高減少も勘案すると借入残高はほぼ横ばいに止まるため、預金が増えるにつれて預貸の差額は縮小していく。


企業の慎重なスタンスは多少の金利変化では一朝一夕には変わらないことが過去数年の経験から明らかであり、預金金利がマイナスになったり、企業収益が大幅に減少しない限りは法人預金が増え続けると見られる。仮に過去3年平均の伸び率(約6%)が続き、借り入れ残高が横ばいのままならば、2020年度には法人も預金超過主体に転じてしまう計算となる。このように家計に加え、非金融法人も預金超過に向かっていく中、マイナス金利に対する批判の声は高まることはあれ、収まっていくことは想定しにくい。 (了)
民間非金融法人の資金調達・運用フロー 非金融法人も2020年度には預金超過に?

 


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