中国 ~もう一つの爆買い

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チーフエコノミスト 柿沼 点

 

<訪日中国人の「爆買い」と中国国内のネット販売の急伸>
訪日外国人の増加と共に、中国人旅行者を中心とした「爆買い」が話題になっている。観光庁によると、今年1~3月期の訪日外国人客数は413万人と前年同期比で+43.7%増加し、旅行消費額も総額で7,066億円に上った。このうち中国人の割合は人数ベースで2割程度ながら、消費金額ベースでは4割に至る。好調の背景には円安も挙げられるが、中国人がこれ程までに日本での買い物に熱心なのは、日本製品や日本のサービスに対する需要の強さを示しているように感じられる。そうであれば、旅行客を待つまでもなく、中国で急伸しているネット販売のルートに日本製品が入り込む余地は大きいように思われる。そこで、以下では、中国のネット小売りにおける「爆買い」について最近の状況を見てみたい。

 

<2014年の中国のネット小売りは前年比5割増>
まず、中国のネット小売りについて近年の推移をみると、2014年には2.8兆元と前年比で+49.7%、約5割の増加となった(図表1)。うちモバイル経由が3割を超えており、この点は日本と同様の動きが見られる。また、中国電子商務研究センターの予測では2015年も4割程度の高い伸びを保ち、4兆元(約80兆円:2015年6月23日の為替レート、19.9円/元で換算)に至るとされている。実際、国家統計局によると今年1-5月のネット経由の商品販売額は前年比+38.5%とほぼ4割伸びており、概ね同センターの予想に沿って推移している。

 

中国では、成長率が鈍化する中で、小売りの伸びも年々低下しつつあり、各地のショッピングモールでの不振が伝えられるが、ネット経由の小売りは徐々に寄与度を高めており、全体が10%程度伸びるうち、ネット経由が約4%を支えていると試算される(図表2)。この状況は、逆に言えばリアル店舗の伸び鈍化が全体の数字以上に進んでいることを示唆している。

 

中国のネット小売り規模、ネット小売りの寄与度は4%ポイント程度

 

<中国のネット小売り金額は世界一>
次に急成長している中国のネット小売り市場規模を各先進国と比較すると、既に米国を抜き世界第1位に位置している(図表3)。2014年の個人消費金額は、米国の11.9兆ドルに対して、中国は3.9兆ドル(2014年の平均レート:6.16元/ドルにて換算)と約1/3に止まるものの、うちネット小売りの割合が1割を超えており、同3%弱の米国を金額で上回っている。なお、世界全体のネット小売り金額は約1.3兆ドルと推計されており、中国は約3割を占めているが、これが更に前年比4割近く伸びているのであるから、堂々たる「爆買い」といえるだろう。

 

この様に、中国でネット小売りが急拡大してきた背景としては、①非ブランド品を中心とした実店舗との価格差が大きいこと(ネット上の価格は工場出荷価格に近い水準も)、②実店舗網・品揃えの貧弱さ、③共稼ぎが一般的であり、買い物に係る時間短縮ニーズが強いこと、④インターネットの普及(と自動車普及率の低さ)などが指摘されている。これらの環境は当面変わらないとみられ、今後の市場拡大余地はなお大きいと考えられる。ネット小売りの前提となるインターネット普及率をみると、日米の約8割に対して、中国は5割程度に止まっている。分母となる人口が大きいため、普及率が1割高まると日本の総人口に相当するネット人口が増加し、一人当たり利用額が足許と同じ(629ドル)と仮定しても、市場は約850億ドル(10.4兆円、123円/ドル換算)拡大する計算となる。。。

 

<越境電子商取引への期待>
国境を跨ぐ電子商取引を見ても中国は日米中3か国の中で最大の買い手となっており、日米から共に年間6千億円程度の購入実績がある(図表4)。日本も健闘しているように見えるが、冒頭にみた中国人の日本製品に対する思い入れや地理的な近さを勘案すると一層の拡大余地があるように思える。

 

前掲の中国電子商務センター資料によると、中国の個人向け電子商取引市場においては「天猫(アリババ集団)」が59.3%、「京東(JD、ジンドン集団)」が20.2%と2社で8割を占める2強体制(他社のシェアは3%以下)となっている。直近の話題としては、「京東」が6月1日に中国人消費者向けに日本製品を販売する専門サイト「日本館」を開設している。中国ビジネスには高いリスクがあるのが通説となっているが、日本企業から見れば、実店舗や現地工場の設置に加えて、電子小売モールへの出店や出品という選択肢は検討に値するのではないかと考えられる。(了)

 

各国の電子商取引(BtoC)、2014年の越境電子商取引(BtoC)

 


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