中国の輸入減少はどの国に痛手となるか

バックナンバーに戻る

チーフエコノミスト 柿沼 点

 

<中国の景気減速は世界経済の懸念材料>
中国の景気減速懸念が高まっている。中国はGDPに加え、輸入金額においても米国に次ぐ世界第二位である。但し、米国よりも中国の方が輸出入比率が高いため、ファクトセットの米ドル建てデータ(2014年)によると、GDP規模は米国の6割未満ながら、輸入金額においては8割を超えており、中国の景気減速が輸入を介して世界経済に及ぼす影響の大きさが窺われる。そこで、今回は各国の中国向け輸出が当該国のGDPに占める割合を計算することにより、その影響の大きさの国際比較を試みた。

 

<中国の生産の伸びは鈍化傾向>
中国の経済成長率は足許で+7%の水準にあるが、景気の実態はより弱めと見る向きが多い。実際、生産の伸びは前年比+6%程度まで鈍化してきており、輸入の伸びも足許ではマイナスに転じている(図表1)。輸入が減少に転じたのはリーマンショック後以来のことであり、一時期より減速したとはいえ、依然高めの成長下にある中国経済において警戒を要する動きである。

 

また、輸入価格を用いて輸入金額の動きを価格要因と実質輸入に分類推計すると、2009年当時の輸入の落ち込みは殆どが資源価格を中心とする輸入価格の低下がもたらしたと考えられる一方、今回は1~3月期を中心に実質輸入の減少も効いていたとみられる点は注目に値する(図表2)。4~6月期には価格押下げの影響がより大きくなっており、実質輸入の押下げ影響は緩和しているが、今後の経済状況や高水準にあるとみられる在庫動向如何では、再び数量調整が生じるリスクもあり、引き続き注視しておく必要があると考えられる。

 

(図表1)中国の生産と輸入 (図表2)今回の落ち込みは実質輸入も減少

 

<中国輸入減の影響は広範にわたるが、NIESと日独に着目>
以下では、IMFのDOT(Direction of Trade、米ドルベース)とファクトセットによる同じく米ドル建ての各国GDPデータを用いて中国の輸入減少が及ぼす各国への影響について考えたい。共に2014年のデータを用いて、中国への輸出額が名目GDPに占める割合を算出した。

 

留意点としては①本データと各国の自国通貨建て統計との違い、②直近2014年のデータのみでランキングを作成したことの二点。①に関して日本では(図表3)にあるようにGDP比が2.7%と算出され、自国データを用いても結果は変わらなかったが、ドイツでは本試算の3.2%に対し自国データ:2.6%と若干差異が生じる。また、②については、総じて大きな変動は見られないが、12位のカザフスタンに関しては2014年に輸出が急減しており、2013年時点ではGDP比が2014年よりも2%ポイント程度高い6.3%だったなど一部には振れも見られる。

 

この様に、結果は一定の幅をもって解釈する必要があるものの、ここで得られたGDP比率は大きい順に(1)アジアNIES(定義にもよるが韓国、台湾、シンガポール、香港)→(2)資源関連国→(3)先進国(日独)と整理できる。資源関連国(豪州、南ア、ロシア、ブラジル他)がよく話題に上るが、やはりアジア近隣国への関係がより深いといえる。

 

更に中国の貿易統計における足許4~6月期の輸入増減率を併せてみると、価格低下の影響等、一過性の可能性もあるが資源国からの輸入の減少割合が大きく、これらの国々の痛手は相当大きい。例えば、サウジアラビアの名目成長率は4~6月期に▲1.6%ポイント押し下げられる(5.9%×▲27.9%)計算となるが、昨年の名目成長率実績+1.1%から考えるとマイナス成長の懸念も生じてくる。また、ドイツはGDP比こそ日本とほぼ同水準ながら、4~6月期のマイナス幅は日本のほぼ倍であり、GDPへの影響は▲0.6%ポイントと当面の景気の懸念材料となりうる。

 

<日本は直接影響に加え、アジア経由の間接影響にも要警戒>
日本への直接影響は▲0.3%ポイントとドイツの約半分に止まると試算されるものの、中国以外のアジア各国への輸出比率も高いため、これにアジア各国向け輸出への間接的な影響、更には現地進出日系企業への影響が加わる点は忘れてはならない。今後の中国経済は金融・財政両面からの支援もあって急減速は避けられると見られるものの、中国発の負の連鎖のリスクには引き続き警戒が必要と考えられる。(了)

 

(図表3)(1)各国の中国向け輸出金額とGDP比、(2)4~6月期の中国の輸入増減

 


本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したものです。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点における当社の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあります。投資に関する最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。

 

PICKUPコンテンツ