クレジット投資のリスクと有効性

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クレジット調査部長 古市 眞


日本の株式市場は、先月、時価総額(東証1部)がバブル期ピーク(1989年12月末)を更新するなど活況を呈していますが、クレジット市場も堅調な地合いが継続しています。


背景には低金利下において少しでも利回りを求める市場参加者の投資行動が考えられ、事業債のスプレッド(対国債の上乗せ金利)は過去最低水準に迫るところまで縮小しています。

 

スプレッドは5月末時点で25BP(NOMURA-BPI事業債インデックス)となっています。一方、グラフから確認できるように、1997年の金融システム不安、2001年の大型企業破綻、2008年のリーマンショック等、スプレッドが急激且つ大幅に拡大した局面では、事業債インデックスが1%程度のアンダーパフォーム(対国債インデックス)を記録したことを踏まえると、一見するとクレジット投資に合理性を見出しにくいかもしれません。

 

NOMURA-BPIの過去データ(すべて中期インデックス)、過去20年のリスクリターン特性

 

しかし、同時にこのグラフからは、中期的には事業債が、国債を上回るパフォーマンス(スプレッドが最低水準時に投資開始していても)となっており、国債と同等もしくはそれを上回るリスク・リターン特性であったことが確認できます。つまり、適切な銘柄選択とリスク管理を行えば、債券運用においてクレジット投資は極めて有効なツールになると考えられます。

 

敢えて条件付きとしたのは、①実際には事業債インデックスという銘柄が存在しないこと、②事業債のリターン特性の特殊性(上下の非対称性)、を考慮する必要があるからです。

 

前者は、単純にインデックス構成銘柄へ投資するだけでは、リターンがインデックスを下回る可能性が構造的に存在していることに起因しています。これは、BBB格未満への格下げ等により、インデックス構成銘柄が償還前にインデックスから除外される場合に起こり得ます。このような場合に除外銘柄は、その時点での売却が困難(評価価格を大きく下回る価格でしか売却できない)となることが多く、その場合にはポートフォリオのリターンがインデックスを下回る可能性が高くなります。

 

後者については、事業債はクレジットリスク悪化時の価格下落が限定されない(最悪デフォルト)一方で、アップサイドは限定されている(よくて満期に100円で償還)ため、一銘柄でも問題銘柄を抱えてしまうと他の銘柄の超過収益分を容易に打ち消してしまうこと(場合によってはそれ以上に悪化)がありうるためです。

 

従って、クレジット投資では、事業債全体の組入比率においても、銘柄選択においても、ダウンサイドリスクの排除が極めて重要だと言えます。そのため、弊社では銘柄リサーチではクレジットにとってのネガティブ・シナリオの検討を優先し、格付の水準に加え格付のボラティリティを考慮した分散投資を実施するなど、運用プロセスにダウンサイドリスクを排除する工夫を凝らしています。

 


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