流動性リスクと投資機会

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2015/09/29
外国債券運用部 石出 好貞


この9月でリーマンショックから7年が経過し、金融市場では「次の危機に備えよ」との声が多く聞かれるようになりました。なかでも米連邦制度準備理事会(FRB)が金融政策の正常化を進める今、クレジット市場において「最も警戒すべきリスクは流動性リスクである」との指摘が増えています。

 

流動性リスクとは、金融市場での取引が極端に枯渇し売買が著しく困難となり換金性が損なわれるリスクを指します。クレジット市場においては、例えば金融市場で何らかのショックが発生して緊張が高まった場合には信用リスクに特段変化が無くてもスプレッドは拡大し、逆に市場が平時に戻り売買が容易な状況では流動性リスクは低下しスプレッドは縮小します。つまり市場の緊張度合や不安心理の強弱、市場参加者による需給要因などにより変動するのが特徴です。

 

2000年以降の米国社債市場を見てみると、確かに2010年頃までは市場の不安心理を表し恐怖指数と呼ばれるVIX指数※と米国A格社債スプレッドの連動性は高く、スプレッド変化に市場不安心理が大きく影響していたことがわかります。(図1)

 

米国A格社債スプレッド VIXインデックス

 

しかし2010年以降は相関が薄れ、VIX指数が低下してもスプレッドが高止まりする場合や、欧州債務危機などで市場の緊張度が高まってもスプレッド拡大は小幅にとどまるケースが生じています。(図2)

 

米国A格社債スプレッド VIXインデックス

 

※シカゴ・オプション取引所が、S&P500を対象とするオプション取引のボラティリティを元に算出、公表しているボラティリティ・インデックス(Volatility Index)の略称指数。数値が高いほど投資家が相場の先行きに不透明感を持っているとされ、恐怖指数と呼ばれている。

 

これは金融危機を教訓としてボルカールールやバーゼルⅢといった金融規制が導入された結果、①銀行や証券会社のリスク許容量が制約され市場仲介機能が低下したこと、②量的緩和による過剰流動性供給により利回り追求マネーが増加したこと、で生じた新たな流動性リスクの特徴であると考えられます。つまり市場の不安心理によってスプレッドの急拡大や急縮小が生じにくい市場構造に変化しているのです。

 

このような市場構造の変化を理解すれば、市場の不安心理が高まる局面においても流動性リスクを過度に恐れることなく、むしろ市場が過剰に反応した場合は投資機会の到来と捉えるといったような、冷静なクレジット投資判断を下すことができるのではないでしょうか。

 


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