ROE経営に対する信用評価上の視点

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2015/10/15
クレジット調査部 吉田 英幸

 

2014年2月に機関投資家の行動規範である「日本版スチュワードシップ・コード」が公表され、多くの機関投資家がこれに賛同を表明しました。これまでは控えめな印象が強かった国内機関投資家ですが、これを契機として、投資先企業との積極的な対話を通じた企業価値向上の取り組みを加速させています。

 

こうした流れを受け、企業の中にもこれまで以上に資本効率性を高める動きや、配当や自社株買いなどの株主還元を積極化する動きがみられています。また、企業が中期経営計画策定の際に、ROEを数値目標として設定することも珍しくなくなりました。

 

ROE(自己資本利益率)とは、自己資本に対してどれだけ利益をあげたかを示す指標です。高い資本効率性を持つ企業は株式市場で評価されやすいため、今後ますます株主価値重視の経営は浸透していくとみられています。ROEは純利益を自己資本で割った指標ですから、同指標を改善させるためには、純利益を増やすほかに分母の自己資本を減らすことでも可能となります。昨今自社株買いが盛んに行われているのにはこうした背景も一つにあるわけです。

 

クレジットアナリストとして企業の信用力を評価する立場からも、こうした流れは基本的には歓迎すべきものであると考えています。企業と投資家の関係性がこれまで以上に密になることでコーポレートガバナンス強化に繋がるだけでなく、中長期的には収益性向上などの効果が期待できるためです。その一方で、自社株買いや配当などの株主還元は社外へのキャッシュ流出を伴うため、財務への一定の配慮が必要となります。短期的なROE向上を目的として過度の株主還元を進め、結果として企業信用力を毀損してしまっては本末転倒であるからです。株主サイドからみるとメリットの大きい株主還元策も、企業信用力の視点からは必ずしもポジティブな面ばかりではない点には一定の留意が必要でしょう。

 

企業の中長期的な成長のためには、株主や債権者などの主要なステークホルダーとの信頼関係が欠かせません。そういった観点からも、資本効率の向上と財務健全性を両立させるような、適切な舵取りをしていくことが今の企業には求められています。

 

(図1)中期経営計画において企業が公表している具体的指標(平成26年度、複数回答可)

 

(図2)株式価値向上に向け企業が重視することが望ましいと投資家が考える具体的指標(平成26年度、複数回答可)

 


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