優先証券の繰上償還延期リスクについてQ&A スタンダード・チャータードが優先証券の繰上償還を延期

2016/11/11

 

日頃より『ゆうせん君シリーズ』をご愛顧賜り誠にありがとうございます。
11月1日、スタンダード・チャータード銀行は、2017年1月に初回の繰上償還可能日が到来する期間の定めのない優先証券(永久劣後債と表記される場合もあります)を、その繰上償還可能日には償還しない方針だと発表しました。
このレポートでは、Q&A方式で詳細についてご説明いたします。

 

Q1.優先証券の繰上償還延期リスクとはなんですか?

A1.優先証券固有のリスクの一つです。
優先証券は他に「法的弁済順位が低い」、「借入期間が、数十年、永久(償還期日がない)など超長期」等の特徴があるため、一般的に利率(クーポン)は同発行体の普通社債等よりも⾼い傾向にあります。

 

●繰上償還延期リスク

優先証券等には、一般的に繰上償還(コール)条項が付与されています。この繰上償還をいつ実施するかは発行体が決定することとなっているため、長期間償還されないこともあります。
繰上償還が期待されている中で、繰上償還が実施されなかった場合、あるいは繰上償還されない見込みとなった場合には、当該証券の価格が大きく下落することがあります。

 

<ご参考>
一般的に、優先証券は以下のような特徴があります。
    • 普通社債などと比べ、法的弁済順位が低い
    • 発行体は一定の条件のもと、利息の支払いを繰り延べる権利をもつ
    • 発行体は事前に決められた期日に繰上償還することができる
    • 借入期間(発行日から償還日までの期間)が、数十年、永久(償還期日がない)など超長期
    • 利率(クーポン)は同発行体の普通社債等よりも高い
  • 普通社債と優先証券の利回りの比較

 

Q2.なぜ、発行体は繰上償還を延期するのですか?

A2. 主に2つの状況(理由)があると考えられます。
①信用力が悪化して、新たな調達ができない状況
②繰上償還を延期することにより、経済合理性が得られる状況

②についての補足
優先証券は、初回繰上償還日以降クーポンが固定金利から変動金利に変わる仕組みのものが多く存在しています。初回繰上償還日以降のクーポン水準が相対的に低い場合、新たに資金を調達するより繰上償還をしない方が有利と判断できる状況のこと

 

Q2-2.初回繰上償還日以降のクーポン水準が相対的に低い場合、必ず繰上償還が延期されるのですか?

A2-2. いいえ今後の資金調達を含め総合的に経済合理性を判断する必要があるからです。

一般的に、投資家の期待に反して繰上償還を延期し、その後資本市場で新たな調達を行う場合、投資家は同程度の信用力の発行体よりも高い上乗せ金利を要求するため、結果的に発行体は高い調達コストを支払うことになります。つまり、近い将来新たな資金調達を計画している場合は、発行体にとって繰上償還の延期は経済合理性を持つとは言い切れないと考えられるからです。

 

Q2-3.「近い将来市場で資本調達するかどうか」は客観的に(だれでも)わかりますか?

A2-3. いいえ 外部から判断するためには専⾨的な知見を要します。

発行体が発表しない限り、以下のような様々な情報から判断する必要があります。
(ア)自己資本の状況
(イ)収益状況
(ウ)優先証券の条件(条件により繰上償還延期後の資本への算入され方が異なる)
したがって、外部から判断するためには専門的な知見を要します。

 

Q3.スタンダード・チャータードはなぜ繰上償還を延期したのですか?

A3.Q2②の経済合理性が理由と思われます。

今回の優先証券は、現在の6.409%の固定金利が、初回繰上償還日以降「LIBOR+1.51%」の変動金利となる仕組みです。Q2②にあるように、初回繰上償還日以降のクーポン水準が相対的に低い場合、新たに資金を調達するより繰上償還をしない方が有利と判断できる状況です。
また繰上償還を延期した後も、自己資本として一定割合算入が認められる優先証券です。

 

Q3-2.スタンダード・チャータードが繰上償還を延期することを予測できなかったのですか?

A3-2.価格が償還価格近辺だったことから、市場では予測されていなかったと考えられます。

初回繰上償還日以降のクーポン水準が相対的に低くなることは認識されていましたが、近い将来市場で資本調達する可能性があることなどから、総合的な経済合理性から、繰上償還されると考えられていました。
また、同様の属性を持つロイズ・バンキング・グループ発行の優先証券の繰上償還が9月27日に発表され、11月14日に繰上償還されることとなったことも、スタンダード・チャータードの優先証券が繰上償還されると予想される理由となりました。

 

Q3-3.今回のスタンダード・チャータードのように信用力が悪化していなくても繰上償還を延期するケースが、今後、同社の他の銘柄、または他の発行体で発生することはありますか?

A3-3.可能性はあります。
ただし、スタンダード・チャータードは1銘柄のみ発表しただけで、すべての優先証券の繰上償還を延期すると発表したわけではありません

Q2にあるように「初回繰上償還日以降のクーポン水準が相対的に低い優先証券」が必ず繰上償還を延期するわけではなく、総合的に判断する必要があります。

 

Q4.優先証券の繰上償還の状況について教えてください

A4.繰上償還の延期は一部の銘柄に限られているものであり、優先証券市場全体に拡大しているわけではありません。引き続き最初の繰上償還日に繰上償還された銘柄は多数存在しています。

 


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