金融市場を取り巻く環境と今後の見通しについて

2016/1/28

経済調査部
門司総⼀郎

 

2016年の日本の金融市場は円高・株安で始まりました。日本だけではありません。世界的にも株式や新興国通貨が下落しています。このように市場が荒れ模様になっている理由は2つあります。1つは中国の経済・株式などに対する懸念。もう1つは原油安です。

しかし、いずれの要因もここまでの波乱を起こすものとは思えません。市場の反応は行き過ぎと見ています。また中国株や原油について下げ止まりを示唆する指標が出てきていることもあり、今後市場の混乱は収束に向かうと予想しています。以下そう考える理由について説明します。

中国経済は「安定化」

まず中国経済ですが、いわれているほど中国経済は悪化していません。経済指標は落ち着いた動きとなっています。例えば鉱工業生産(前年同月比)はここ数年低下を続けてきましたが、昨年3月を境に下げ止まっています。また小売売上(同)は昨年4月を底に上昇に転じています。

中国の鉱工業生産と小売売上

 

こうした経済指標を踏まえて足元の中国経済については「悪化」というよりも「安定化」しつつある状況と判断しています。政府が「今年は昨年よりも景気に配慮して経済政策を運営する」方針を明らかにしていることから、今年は中国経済は昨年に比べて改善すると見ていますが、そうなれば市場の中国経済に対する悲観論は修正されることになると予想しています。

中国株のバリュエーション調整は終了

次に中国株です。中国株安は経済の悪化のためとの見方が多いのですが、経済はそれほど悪くありません。中国株が下落した本当の理由は、政府への信頼感の喪失です。昨年の株価下落局面では政府は政策総動員でこれを阻止しようとし、実際に年末にかけて中国株は回復し
ました。そのため市場参加者の間では「最後は政府が何とかしてくれる」という信頼感が根強く残りました。

上海総合指数

 

しかし、今年の初めに中国株が再度急落した際に、政府は株安を阻止するような行動をほとんど起こしていませんでした。そのため投資家の政府への期待が急速に萎んで売り注文が増加しました。これが年初からの中国株下落のメカニズムです。


政府が株価対策を見送っているのは、既に打つ手なしとなっているためです。あれだけの株価対策を実施したにもかかわらず、足元の上海総合指数は既に昨年8月の安値を下回っており、当時株式市場を買い支えした政府系金融機関などは評価損を抱えていることになります。こうした状況下で昨年同様の株価対策を実行することは無理でしょう。


しかし、政府の介入がないことは悪いことではありません。昨年の株価対策が市場の政府に対する根拠のない信頼感を高めてしまったことが今年の中国株安の遠因となったことを考えると、今回のように政府が株安を容認する方が、株価底入れのタイミングは早くなり、底入れ後の上昇は大きくなると思われます。中国政府が株安を容認して株価対策を見送っていることは望ましいことと考えています。

バリュエーションや需給面からは中国株の底入れが近いことを示すデータが出てきています。足元の上海総合指数の予想PERは12.5倍、これは中国株が上昇を開始する前の昨年1月と同水準です。また信用買い残高は1兆元割れとなりましたが、これも昨年1月と同水準。こうした指標は既に中国株が充分下落したことを示すものです。

原油先物とドル円先物のネット買い残減少は底入れのサイン

原油価格にも底入れが近いことを示す指標があります。米原油先物取引のネット買い残高(買い建て枚数から売り建て枚数を引いたもの)は昨年10月から今年1月にかけて大きく減少しました。これは買い残が減少、または売り残が増加したことを意味します。

米原油先物取引のネット買い残高とWTI先物価格

言い換えれば今後の売り圧力が軽減、買い余力が増加していることになるので、需給面からの原油価格底入れを示唆する指標と見なすことができます。ベネズエラが臨時総会を呼び掛けるなどOPEC(石油輸出国機構)内からも足元の原油安の修正を望む声が出ていることも踏まえて、原油価格が下げ止まるタイミングは近いと考えています。

米通貨先物ネット円買いポジションとドル/円レート

 

原油同様に先物取引のデータが転換点を示しているのがドル円です。今年に入って米通貨先物取引のネット円買い残高(円の買い建て枚数から売り建て枚数を引いたもの)は2012年10月以来初めてとなるプラスに転換しました。これは足元円に強気な投資家が増えた分だけ、将来の円買い余力が低下、買いポジションの解消による円売り余地が大きくなったことを示しているので、円高から円安への転換を示すシグナル
として注目しています。目先のドル円は1ドル=120円前後まで円安に振れるとの見方です。

日本株は売られ過ぎ、反転上昇へ

最後に日本株ですが、株価は下落したものの、景気や企業業績が悪化している訳ではありません。当社では日本の実質経済成⻑率を2015年度1.1%増、2016年度1.7%増。企業業績についてはそれぞれ17.8%増、7.0%増と見ています。多少の下方修正はありうると見ていますが、それを考慮しても、ここまでの株価下落を正当化できるものではありません。株価下落を正当化するのであれば景気は後退局面、業績は減益ぐらいが必要でしょう。よって日本株は売られ過ぎであり、中国への懸念後退や原油安⼀服に伴って、近日中に上昇に転じると予想しています。


以上述べたように、年初から国内では円高・株安、世界的にも株安や新興国通貨安が続きましたが、中国経済への悲観論の修正や中国株・原油価格の下げ止まりに伴って、こうした市場の混乱は収束に向かい、世界的に株式や新興国通貨が上昇、国内も株高・円安が進むとの見方です。

 


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