日本株ファンドマネージャーの視点

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M&A成功の条件

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2018/6/5

株式運用第一部

上石 卓矢

 

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

はじめに

日本企業はたくさんの現金を保有しています。この使い道として、株主還元の議論が先行してきましたが、今後はM&Aの議論が増えるとみています。最近「今すぐ使わないお金は返して下さい」という株主に対して、「M&Aのためのお金が必要です」とM&A投資枠をもうける企業が増加したためです。企業が株主還元を行わなくても保有現金の価値は一定ですが、M&Aは場合によっては価値がゼロになる可能性があります。残念ながら、日本企業の過去のM&Aは失敗が多く、その結果として買収発表時には株価が下がる傾向にあります。一方、海外には良いM&Aを行うことで、買収発表時に株価の上がる企業がいくつも存在します。日本企業はどうすればM&Aで成功できるのでしょうか。

私の考えるM&Aの成功・失敗を決める主な条件は下の表にあるように、(1)自社で発掘した、(2)強い本業周辺の事業を、(3)安く買収し、(4)買収先の利益率改善でシナジーを出す、というものです。

M&Aの成功・失敗を決める主な条件

 M&Aが上手な会社の特徴

M&Aが上手な会社の特徴として、買収案件を自社で発掘するネットワークを有していることが挙げられます。自社で発掘した独占交渉案件はゆっくり交渉ができるため、良く知った相手を適切な価格で買収できます。一方、銀行や証券会社経由の入札案件は大抵割高で、出資の比率や時期への制約があることも多いです。また、自社で案件を発掘できると買収の選択肢が増えるため、相手先との交渉でも優位に立てます。強い事業をさらに強くするM&Aも成功しやすいと言えます。すでに強い事業を持っているということは、買収案件の情報も早いタイミングで入手できることが多く、その事業の特性もよく理解しています。ところが、本業ではない事業を買収する場合、その分野の有力企業が見送った案件というケースも多く、事業の特性を見誤って高値掴みをするリスクがあります。また、買収先をうまく経営できるかも不明です。

 M&Aが上手な会社の仕組みとは

安く買収できれば、支払うプレミアムを抑えることができ、成功確率が上がります。M&Aが上手な会社には必ず安く買う独自の仕組みがあります。例えば、阪和興業は一時的な赤字計上時の出資、RIZAPグループは第三者割当増資を活用した買収、リロHDは自社グループの事業承継検討中のオーナー企業への働きかけ、コマツはKOMTRAXなど自社データによる需要の転換点を見極めた上での買収を行っています。

日本企業がより魅力的になるために

買収側の商品を被買収企業に本気で販売してもらうのは意外と難しく、売上増加よりも買収先の利益率を改善することでM&Aを成功へ導く例は多くなっています。M&Aが上手な会社には利益率を改善する方法が備わっています。ここ数年は稼ぐ力を強めた日本企業が多いですが、次は稼いだお金を使う力が強化されると、日本企業はより魅力的になると見ています。

 

 


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