がんばれ日本企業

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2018/2/26

株式運用第一部

部奈 和洋

 

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

「市場から期待はされているけれど、信頼はされていないということが良く分かりました」と、大手電線メーカーの社長が面談時に開口一番おっしゃいました。期待されていたセグメントの利益予想を中間決算発表時に引き下げたため、同社の株価が大きく調整したことを受けての発言です。同社の株価調整は、市場の高い期待を保てなかったことが背景にあると思われます。このように大手企業の社長であっても、市場との対話には苦心されているようです。決算発表を受けた市場の反応を見ていても、足元業績に関わらず、先行きに対する期待、この企業なら大丈夫という信頼を保てたかどうかで株価反応に差が出ていますので、差異を考えてみました。

 

期待をつなげるために企業側が出来ることの一つは、業績や株価が低迷している時の株主還元の拡充です。増配は、配当のシグナリング効果といわれているように、市場は経営者の自信を汲み取ることが多いです。また、機動的な自社株買いも、投機的な売りを抑制すると思います。1月半ばからの市場の調整局面において、大手ではNTTなどが自社株買いを公表しましたが、まだまだ少ない印象です。私の上司も隣で、「このような局面こそ、余剰資金を抱える企業は率先して自社株買いをするべきなのに」と、毎日のように嘆いていました。このことは、足元の反発が米国株に対して弱い一因にもなっている気がします。

 

情報開示や先行きの示し方も差異につながると思います。例えば、先の決算発表において、決算内容に対して似通った印象をもった食品企業が2社ありました。ただし、将来の見通しに関して2社の説明は異なりました。1社は来期の見通しについて、原材料高など不透明で見通すのが難しいと話したのに対し、もう1社は取り組んでいる能力増強による数量増効果に重点を置いて説明されました。このことだけではないですが、翌日の株価は、前者は下落、後者は上昇しました。企業価値を守る意味でも、分かる範囲でガイダンスすることは重要だと感じます。

 

経営陣との対話の場があるか否かも差異になると思います。伊藤レポートでも企業と投資家の対話の重要性が説かれていますが、経営陣が直接に行うことで、その効果は格段に高まる印象です。私も、経営陣と面談させていただいて中長期の業績伸長に自信が持てた銘柄については、短期業績で一喜一憂することが減り、保有期間が長くなっています。昨今の国の後押しもあって、経営陣との面談の場は5年前より格段に作っていただけるようになっています。ただし、業界によってむらがあります。金融業界は以前より積極的ですし、最近では食品業界なども積極的になっている印象がある一方で、日本の代表的な産業である自動車業界、特に完成車メーカーの社長は、投資家との面談に消極的な印象で、ほとんど行っていないと思います。各社ともグローバル企業で多忙の身であることは承知していますが、投資家との対話の機会を増やすことで、相対的に割安なバリュエーションの上昇につなげられる可能性もあるのではないかと思います。

 

上で挙げたこと以外にも、経営者のカリスマ性や継続的なM&A、魅力的な株主還元などで信頼をつなぐ企業もあります。日本株の運用担当者としては、どの企業も企業価値の維持・向上に向けて出来ることはやっていただきたいと願っています。

 

 

 


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