外国人労働の現状と株式投資へのインプリケーション

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2018/3/5

株式運用第一部

上石 卓矢

 

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

訪日外国人といえば消費に注目が集まっていますが、実は雇用でも大きな変化が起きています。日本では2008年をピークに総人口が減っていますが、2008年から2017年にかけて就業者は121万人増えています。同期間に外国人労働者は79万人増えており、就業者の増加幅のうち約65%が外国人だと推察されます。日本は足元で人手不足に直面しているため、外国人労働者の増減が日本経済の成長率を左右するといっても過言ではありません。今回のレポートでは、外国人労働者の現状を整理したうえで、投資へのインプリケーションを考えます。

就業者数と外国人労働者数の累積変化幅

 

まず、外国人労働者はどこからやってきたのでしょうか。右上のグラフを見ると、ベトナム、中国、フィリピン、ネパール、韓国、が上位5カ国だと分かります。2017年の訪日外国人旅客者数の増加幅上位5地域(韓国、中国、台湾、香港、米国)と比較して、1人当たりGDPの低い国が多くなっています。国別では、ベトナムは技能実習生が多い、フィリピンは永住者や日本人の配偶者等が多い、ネパールは留学が多い、という特徴があります。

在留資格別外国人労働者数の累積変化幅

 

在留資格別では、技能実習の増加幅が最も大きいですが、技能実習制度は国内外から人権侵害との指摘がある他、実際に年間5,000人以上が失踪しているため、何かの事件を契機に技能実習資格者が大きく減少するリスクがあります。一方、留学資格者については、日本の少子化によって大学が留学生誘致をせざるを得ないことから、今後も増え続けるのではないでしょうか。また、留学ビザから就労ビザへの切り替えは認められやすく、この切り替えを行う人は年間約2万人と4年前から倍増しており、留学資格者の増加や人手不足を背景に専門技術資格者も増加トレンドが継続すると見ています。身分資格は日本人の配偶者等や永住者が該当しますが、日本に5-10年間住めば永住権を認められることが多く、足元でも年間約3.6万人が永住者資格への切り替えをしていることから、留学ビザや就労ビザの取得者が増えるのにつれて、国際結婚や永住権取得の件数も増えると推察されます。

 

外国人労働者の総数も増えると予想しています。(1)アジアの他の国と比較して給料が高い、(2)日本のイメージが良い、(3)簡単にビザが取得できる、という3点がその理由です。アジアで比較的発展している香港や台湾でも最低賃金は時給500円以下であり、東京都の最低賃金958円の半分以下の水準です。また、給料以外の観点でも、日本が好きな人、住環境や治安を評価する人が一定程度存在しています。さらに、日本はビザの取得が容易であり、日本語学校に一定金額を払えば留学ビザを取得可能で、ひとりがビザを取得すればその家族もビザの取得が可能です。投資ビザも他国より基準が緩く、英国は20万ポンド(約2,900万円)、台湾は20万米ドル(約2,100万円)の投資が必要なのに対し、日本の経営・管理資格は500万円で済み、その要件も2015年に緩和されました。加えて、外国人の投資案件で一般的な飲食店の開業については、香港では年間200万円前後の飲食ライセンス代の政府への支払いが必要なのに対し、日本ではこの費用が必要なく、開業しやすい環境となっています。

 

外国人労働者数が減るリスクイベントは、(A)自然災害の発生、(B)外国人に対する国民感情の悪化の2つを想定しています。日本人にとって自然災害は身近な出来事ですが、外国人には地震を経験したことのない人も多く、東日本大震災発生時には地震と放射能への恐怖から、少なくない数の外国人が職を捨てて母国に帰りました。(B)については、外国人の生活保護や政府住宅の悪用増加、交通インフラの混雑や治安の悪化、住宅価格高騰や就職難などから国民の不満が大きく溜まりデモが頻繁に発生するといった他国の事例がありますが、現在の日本を見る限りでは今後数年間はそのレベルには達しないと見ています。

 

投資へのインプリケーションですが、マクロ面では、移民に否定的な国民性や生産年齢人口減少といった常識とは反対に、外国人労働者の増加から就労者数は増え続ける可能性があります。ミクロ面では、日本語学校を主力とする上場企業が少ないため、外国人向けの人材ビジネスがこの恩恵を享受できる投資先だと見ています。もちろん外国人材を活用できる文化を持つ企業も有望だと考えています。また、ESG投資が増える中で、Sのテーマ(Social)として技能実習制度に焦点があたる可能性があり、依存度の高い企業は注意が必要です。

 

 

 


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