99.9、事実は一つ

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2018/3/12

株式運用第一部

永田 芳樹

 

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

私の週末の楽しみは、日曜ドラマの「99.9刑事専門弁護士シーズン2」です。人気アイドルグループ嵐の松本潤が、刑事専門弁護士深山を演じる軽快なドラマです。「99.9」の意味は日本の刑事裁判で、有罪の判決が下される確率が99.9%ということで、起訴されたらほぼ有罪という意味です。このドラマで深山が追い求めるのは有罪が確定している事件を無罪にすることではなく、事実を明らかにし、あるべき判決に導いていくことです。現場をつぶさに調べ、本当に起こったことを自分たちで再現し、時間の流れの中での小さな矛盾から証拠を積み上げ、真実に迫っていきます。

 

このドラマを見ていて感じるのは、株式のアクティブ運用に携わる人にとっても、真実を追求することは大切だということです。例えば最近アナリストと話していると、「現在の為替は1年前と比べて円高水準のため、2018年度の会社の期初に発表する利益予想は、数量が増えたとしても良くてフラットです。」という話をよく耳にします。さらに「だからこの株は今買うべきではありません。」と自らの投資判断として主張します。

 

さてこの考え方は、株価の投資判断として正しいでしょうか?どこにもうそはなさそうなので、一見正しく見えます。ところが実際は株式投資の判断としては大間違いです。なぜなら株式価値の一部しかみていないからです。

 

確かに「1年前より円高」や「期初予想は高くない」ということは、誰でも予想できる事実です。またこれから期初予想発表までの1か月程度は、皆がこのように考えるので株価は上昇しづらく、今この瞬間は買う必要はないかもしれません。ただこのアナリストの「予想」は目先の1か月をフォーカスしているだけで、長期的な企業や業界の変化を考えているわけではありません。株価は将来の利益の割引現在価値です。1か月後、1年後、2年後、10年後、そして無限大の時間軸の中で、これからこの企業が発表する予想はせいぜい1年後までの利益予想です。

 

さらにその企業の期初予想が、株式価値に直結するともいえません。あくまでもこれから企業が発表する予想は、企業が現状考える参考数値であり、1年後私たちが知る事実ではありません。外部の人間より多くの情報を持つインサイダーが算出した一つの予想例です。保守的かもしれないし、内部の目標値のような強気すぎる予想かもしれません。このような1年後の事実とは確実に異なる予想例を当てようとするより、バイアスを除いた1年後の事実を、自らのマクロ予想、個別企業調査に基づき予想する方がよほど意味がありそうです。為替の変化だけを材料に語るアナリストは、予想例がどうなりそうかを語っているだけです。それをあたかも、株式価値全体として話しているのです。

 

ここ1年、セルサイドのアナリストが発表するレーティング変更や予想に株価が敏感に反応するようになったと強く感じます。これは日本で4月に導入されるフェアディスクロージャールールや、欧州での情報開示の規制の変化が水面下で大きく影響していると思われます。

 

「99.9」の深山の口癖は、「事実は一つ」です。アナリストが予想しようとしている1か月、1年間、5年間、10年間の利益も10年後に振り返れば、事実は一つです。10年後の時点で10年前の今を振り返ってみれば、2018年度の利益は些細なことです。この歴史の一部にうずもれる会社予想を「予想」することに、意味があるのでしょうか。確実に大きな市場や競争環境の変化が起こって

おり、長期の変化が10年後の株式価値を決めているはずです。アナリストは会社予想を「予想」することに注力するのではなく、10年間の事実を予想することに注力しなくてはいけません。もちろんこれはまず当たらないので目先のことに注力したい誘惑に駆られるでしょうが、企業価値を本気で考えない人に事実を予想できる可能性はありません。

 

短期ではセルサイドのアナリストが発する情報への株価の反応が大きくなった今こそ、それを利用する投資家が、その人が真実を追い求めるアナリストか、はたまた予想したふりをしている人なのか、その選別眼を磨くことがますます重要となってきました。

 

 

 


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