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2018/4/2

株式運用第一部

永田 芳樹

 

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

1ヶ月ほど前、東京から電車で1時間強の中核都市にある2社の小型株の会社取材に行ってきました。両社とも駅からバスで20分ほどの場所に位置し、市が開発した小さな工業団地に本社を構える、控えめな印象を与える佇まいの企業です。1社は半導体の洗浄に必要な材料を作っている化学系のA社、もう1社は半導体や機械の部品を製造する機械系のB社です。

 

A社は不運にもリーマンショックの直前に上場したため、その後長期間、業績が低迷しました。そんな中、2017年の前半にそれまで300円前後で長らく推移していた株価が1,000円台に急騰しました。その後の株価は900円から1,200円の間を行ったり来たりしていますが、この会社は正に見過ごされた中小型株の特徴を多く持っています。

 

①地方に本社を構え自ら投資家訪問などのIR活動を行わないが、訪問や電話取材には対応する。

②長らく業績が低迷している。

③IR担当者は10年以上変わっていない。

④過去の経験から、機関投資家とのコミュニケーションギャップがある。

 

A社とは、10年以上前に行われた上場時のロードショーで面談を行ったのを覚えています。ただ、ロードショー以来機関投資家回りを行っていないので、最近小型株を見始めた人には馴染みのない企業です。何故機関投資家回りを行わないかというと、上場直後のリーマンショックが原因の一つです。中小型株ファンドマネージャーからみると、その後の業績の低迷とIPOプレミアムの剥落で株価が十分の一になったという記憶、A社のIR担当者からみるとIPO時に注目を浴びた華々しさと、その後の業績低迷で数字を中心に動く機関投資家に冷遇されてきたという記憶が相互にあることが、長期にわたるリサーチレス状態を作り出してきたと感じます。

 

このような背景から、A社とのコミュニケーションギャップを解消するには時間がかかりましたが、マイクロ・キャップ・ファンド(超小型株ファンド)は長期でコア銘柄に育てていく運用方針であることなどを時間をかけて丁寧に説明し、少しずつ打ち解けていきました。同社は財務、経理、総務を担当する副社長がIRを担当されていますが、社員と株主のために長期目線で経営を行っているというお話を伺うことが出来ました。

 

一方、B社の時価総額はA社と同じ程度であり、①と②も共通していますが、3年ほど前に一旦業績が回復したこともあって、IR活動には積極的です。やはりそのような会社を訪問すると歓迎されているのが肌で感じられ、自ずとアクティブなミーティングとなり、訪問時間も2時間近くになりました。このように歓迎してくれる地方の本社を訪問すると、その場で製品展示や工場見学を設定していただくことも多く、その企業を知る上で大変役立ちます。

 

さてこのA社とB社、私はどちらを組み入れたくなるでしょうか。答えは両方です。ただ組み入れウェイトは、A社の方を多くしたいと考えています。

 

その企業に投資するかという結論は主に割安さと成長力から導き出されます。仮に経営の魅力度が低かったとしても、十分割安なら投資します。A社は経営陣の考え方は悪くはないのですが、投資家とのコミュニケーションに問題があります。ただこれは変えることが可能です。短期の企業業績は市場環境やイノベーションなどに左右され、直接機関投資家が変えることはすぐには出来ません。ただA社のような場合は、企業と機関投資家との関わり方について、一人の小型株ファンドマネージャーでも変化を促すことができます。このためA社には投資家とのコミュニケーションの改善に伴うバリュエーションの変化の可能性を含めて、大変魅力を感じます。

 

最近フェアディスクロージャールール導入やESG投資への注目もあり非財務情報に関心が高まっています。しかし私の実感としては、既に多くの投資家と接してきた企業に対してファンドマネージャー個人の働きかけが大きな変化を与えることは、極めて難しいのが現実です。一方、私の運用するファンドで発行済み株式の4%~6%程度保有し機関投資家では他に保有がないマイクロ・キャップ・ファンドでは、ここ1年だけでも久々に増配や株式分割を行った会社がかなりあります。私と企業のミーティングでは、一切増配や分割をお願いしたり強く要請したりはしません。ただ長期保有のリスクを取っている運用者として、“どうやったら企業価値をあげられるか”、“一般的な上場企業が行っていることでその会社がまだ実施していないことは何か”、“普通の運用担当者は企業のどのような点を気にするか”といったことを話しています。

 

メジャーな上場企業では当たり前なことでも、小型株ではその小さなヒントが大きな飛躍につながります。

 

 


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