バリューからの覚醒

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2018/4/23

株式運用第一部

永田 芳樹

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

日本の個人投資家がもっとも見ている情報サイトのひとつ「ヤフー掲示板」において、ここ2週間の最大の注目株はマネックスグループです。マネックスグループは日本のネット証券市場を作り上げた会社の一つですが、収益力の安定性に不安があり、またネット取引のシェアでも、長年SBI証券や楽天証券の後塵を拝してきました。問題の一つが株式市場の出来高に依存した国内事業の収益です。これは同社の収益構造に起因するものですが、株式市場が上昇基調で個人投資家の売買が活発な時は100億円を超える営業利益を叩き出しますが、そうでないときは20億円程度がやっとの時もあります。またトレーディングツールで定評のある米国のトレードステーションを買収したことも、長年業績の足を引っ張ってきました。

 

私は10年近くマネックス株に注目してきました。この株の魅力は“割安性”と“変化への努力”です。PBRはネット証券でもっとも安く放置されていますし、利益も出る時は出ます。海外企業を買収することで、米国の優れたトレーディングツールを日本の顧客に広げたいという、松本社長の理想も是非実現して欲しいものです。

 

ただマーケットは待ってくれません。株式市場の出来高がピークから減少している中、国内の収益向上はなかなか見えません。手数料競争も再燃しつつあります。結局国内の収益は株式投資を行う個人投資家の増加がなければ、成長できないのが現実です。

 

そんな中、昨年後半からの仮想通貨ブームは、金融界にとって大きな変化です。私にとって一番大きなインパクトは、20代の若い世代が興味を持っている点です。実際コインチェックは短期間に170万口座を獲得しました。その多くが若年層です。ここ数ヶ月、若い世代と話してみると、男性だけでなく女性も仮想通貨に興味を持っていました。その経路はどうも友達からの口コミが中心で、株式投資はリスク資産として最初から拒絶する層でも仮想通貨は投資しても良いと考えています。おそらく「通貨」という安心感が投資でなく、円という通貨との「等価交換」の感覚を持っているようでした。私だと裏付けが危ういイメージが大きいのですが、若年層には企業や高齢層の既得権益資産である株式と異なり、自分たちが作り上げていく新しいアセットクラスのため、投資の心理的なハードルが低いようです。

 

今回のコインチェック騒動を見ても、伝統的な金融界が思い込んでいる「若年層は投資しない」という認識は間違いであったことがわかります。先月500人規模の証券会社の投資信託の投資家向けセミナーで講師をしましたが、投資家の平均年齢は確実に70歳を超えているようでした。これが日本の現状であり、若年層への投資の普及は難しいものだと思い込んでいましたが、実際は我々既存の運用会社や証券会社が若年層の視界に入っていなかったのです。

 

マネックスグループの松本社長は、今回コインチェックの買収という勝負に出ました。狙いはコインチェックの持つ若い世代の顧客です。もし彼らの心を捉えられれば、人口減で相対的に世代の人数が少なくても、既に170万口座獲得(口座といってもメールでリーチできる権利だけですが)というこのアドバンテージは無限の可能性を持っていると考えられます。私がヒアリングした方も友達に勧められ、とりあえず口座だけ作ったそうです。このように、様々なお金に興味のある若年層を広げられれば、後塵を拝してきた他のネット証券を一気に逆転できるポテンシャルがあります。

 

今は仮想通貨を対象としていますが、資産運用に興味がある若年層に確実にリーチできることで、将来ネット金融のリーディングカンパニーになるかもしれません。

  

今この株の位置を考えると、まさにバリューから10年タームで業界上位にのし上がる可能性を秘めた成長株に変貌し始めたと感じています。実際変貌するかは関係なく、株式市場が成長期待を織り込み始めたことに意味があります。今後の利益成長はもちろん、相対的にディスカウントされてきたバリュエーションにプレミアムがついていく過程に入ったのです。将来の成長を内に秘めながらも株式市場での評価が低くとどまっているバリュー株が好きな私にとって、年1、2社ある「バリューからの覚醒」銘柄へ期待が膨らんできました。

 

 


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