千里の道も一歩から

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2018/5/7

株式運用第一部

部奈 和洋

 

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

3月下旬に金融庁は、「コーポレートガバナンス・コードの改訂と投資家と企業の対話ガイドラインの策定について」と題する提言をとりまとめ、「コーポレートガバナンス・コード改訂案」及び「投資家と企業の対話ガイドライン(案)」を公表しました。この改訂案では、CEOの解任に関する記載が加えられるなど、企業と投資家の対話がより一層求められています。しかし、多くの企業に取材のお願いをしていると、IRに消極的な姿勢の企業は今でも見られます。今回は、IRに消極的な企業がよく挙げる3つの理由と、そのような企業に対する取り組みを紹介したいと思います。

 

一つ目の理由は、人材不足です。IRとはどのようなことをすればよいかわかっている人がいない、もしくはIRを行う部署を設けていない、などがこれに当たります。このような企業の場合は、詳しい説明資料などなくても、社長が経営に対する考えを自らの言葉で話すだけで十分なので、「何もしないよりは試した方が絶対に良い」とお伝えしています。また、自社のアピールポイントが分からない、といった話も聞きますが、取材をしているときらりと光る部分が見つかることもあります。先日訪問した100年以上の歴史を持つ企業では「創業来、関東大震災の時にしか赤字になったことがない」というお話を伺いました。私にとっては非常に好印象なことでしたが、企業にとっては特にアピールする点ではないと考えていたようでした。

 

二つ目は、地方企業であるため物理的にIRを行いづらい、もしくは行えないという理由です。投資家側が訪問した場合には面談を受けていらっしゃる企業もありますが、全く受けていらっしゃらない企業も少なくありません。こういった企業には、電話やWeb会議システムなどがますます容易に活用できるようになっていることをお話ししたり、東京での仕事の帰りに少しIRの機会を設けていただけないか提案したりしています。

 

三つ目は、IRを行うことのデメリットを強く意識している企業です。例えば、過去にIRの失敗により株価が大きく下落した経験がある企業、機関投資家に保有されたくないと思っている企業などです。先日訪問したA社でも、リーマンショック以降は全くIRを行ってこなかったとおっしゃっていました。当時、業績見通しの下方修正を行った後に、株価が大きく下落したことがトラウマになっている印象でした。同社はそのような経験から非常に保守的な計画をたてます。具体的には、同社の営業利益は過去3年で5倍以上に成長していますが、期初計画は例年ほぼ横ばいで作られています。このような企業とはIRのメリットも議論するようにしています。例えばA社とは、経営上の課題の一つである採用の問題を緩和する可能性や、従業員の株式保有によるモチベーション向上などを話し合いました。他にもメリットとしては、株価や流動性の改善や、買収防衛、議決権行使なども議論します。資金調達ニーズがない企業にとっても、このようなことは関心があるように思います。

 

このように、お話ししている事柄は非常に簡単なものばかりで、すぐにでも実行できることが多いのですが、それでもIRに消極的な姿勢の企業はなかなか変わらないのが現実です。しかし少しでも変化すれば、企業価値の向上に結び付くと考えているため、私は好んでこのような企業とミーティングを持ちたいと考え、お願いをしています。今後も地道に活動していきたいと思います。 

 

 


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