金利と株式市場-金利上昇は株高!?

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2018/3/1

経済調査部

部長 門司 総一郎

 

最近米金利の上昇が株式市場に与える影響について質問を受けることがよくあります。「米国の長期金利が3%を超えても株式市場は大丈夫か?」といった具合です。

 

一般に金利上昇は株式市場にマイナスと考えられていますが、金利上昇にもかかわらず、株価が上昇することは珍しくありません。例えば米国では過去15年間に10年債利回りが1年以上上昇した時期が4回ありますが、4回全てでS&P500種株価指数は上昇しています。これでは「金利上昇は株式市場にプラス」と言う方が正しいように見えますが、今回の「市場のここに注目」は金利上昇と株式市場の関係について考えてみます。

 

米10年債利回りとS&P500指数

 

結論から言えば金利上昇は株式市場にマイナスです。ただし他の要因次第では金利上昇にかかわらず、株価が上昇することもあります。どのような時に金利と株価が同時に上昇するのか、上記の4つの事例を参考に考えてみます。2つのパターンがあります。

 

1つは景気が拡大局面にあるケースです。4つの事例の中では()()がこれに該当します。()も拡大局面ですが、景気拡大の効果よりも、もう1つのパターンである危機脱却の効果の方が大きかったと思われるため、後で()と合わせて説明します。

さて()()ですが、この期間に金利が上昇したにもかかわらず株価も上昇したのは、金利上昇のマイナス効果を景気拡大のプラス効果が上回ったためと考えています。またこの2つの期間は米連邦制度準備理事会(FRB)が政策金利を引き上げた点でも共通しますが、どちらの場合もFRBが慎重なペースで利上げを進めたことが奏功し、株価の上昇を妨げることはありませんでした。

 

もう1つのパターンは、経済が危機的な状況から脱却する際に見られる金利と株価の同時高です。 ()()がこれに該当します。

 

経済がリーマン・ショックのような「危機」と呼ばれる状況にある時は、投資家は株式などリスク資産を避け、現金や国債のような安全性資産に資金をシフトします。その結果、金利は低下、株価は下落します。

 

しかし、危機が収束に向かえば投資家は逆に安全性資産からリスク資産に資金をシフト、金利と株価が共に上昇します。()のケースではリーマン・ショックからの脱却が、()のケースでは欧州債務危機からの脱却が金利と株価を同時に押し上げることになりました。

 

以上見てきたように、過去15年の米国では金利上昇時に株価も上昇していますが、だからといって金利上昇が株価にプラスということではありません、上記4つの事例における金利上昇がいずれも景気拡大や危機からの脱却を原因とする「良い金利上昇」であったことがその理由です。

 

一般に金利と株式市場の関係については、金利が原因で株式市場が結果と考える方が多いと思いますが、そのように考えると、金利上昇が景気や業績、流動性に与える影響などマイナス面にばかりに目が行って早期に株式を売却、結果的に得べかりし利益を失ってしまうリスクがあります。「金利上昇は株式市場にマイナス」と短絡的に判断する前に、債券市場や株式市場を取り巻く環境、特に金利上昇の背景となっている要因について検討することが大切と考えています。

 

今回は金利上昇時に株価が上昇する、「良い金利上昇」を取り上げましたが、金利上昇に伴って株価が下落する「悪い金利上昇」も勿論あります。このテーマについては改めて取り上げたいと思います。

 

以上

 


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