門司総一郎のMarket Report  トランプ米大統領のここに注目-ファンダメンタルズ VS トランプ-

バックナンバーに戻る

2018/4/5

経済調査部

部長 門司 総一郎

はじめに

3月1日にトランプ米大統領が米国の鉄鋼・アルミニウム輸入に新たな関税措置を設けると表明したことを受け、世界の株式市場は大きく下落しました。その後もトランプ氏が、知的財産権侵害を理由にした対中制裁関税を打ち出したことなどから、株式市場は上下に振れの大きい動きを続けましたが、3月下旬に入ってからは落ち着きを取り戻し、狭いレンジでの動きとなっています。今回の「市場のここに注目」は主としてトランプ氏の保護貿易策との関連から、足元の株式市場の状況や今後の見通しについて考えてみました。

 

日経平均株価の推移

世界経済は好調

足元の株式市場が比較的落ち着いているのは、景気や企業業績などのいわゆるファンダメンタルズが好調なためと考えています。そもそも保護貿易が株式市場にマイナスになるのは、関税の引き上げや数量規制などによる景気や企業業績の悪化を市場が警戒するためです。3月に入ってからの世界的な株式市場の下落は、保護貿易による景気や業績の悪化をある程度織り込んだものといってよいでしょう。

 

足元の世界経済は好調です。国際通貨基金(IMF)の直近(今年1月)の世界経済見通しでは、2018年、19年の経済成長率は3.9%と高い伸びが見込まれています。企業業績も好調です。大和証券が米情報サービス企業IBES社のデータをまとめた資料によれば、世界の企業業績は2018年が13.8%増、19年も9.3%増の見通しです。トランプ氏が保護貿易策を表明しているにもかかわらず、景気や企業業績が好調を続けていることが、株式市場が比較的落ち着いている理由と見ています。

 

現在の世界経済はかなり強いと見ています。そう考える理由は、今回の世界経済の拡大が金融緩和などの循環的な要因でなく、「第4次産業革命」と呼ばれる大きなイノベーションの波に支えられていることです。技術革新により、新商品や新サービスが次々に生み出され、それが人々の生活を変えています。スマートフォンについては、既に普及は一巡したとの見方もありますが、今後まだ自動運転車や宇宙旅行、ドローンの本格活用など様々なテーマが控えており、簡単に世界経済が腰折れする可能性は低いと思われます。

 

保護貿易と米中間選挙 

一方で、現在の保護貿易の流れが今後も強まっていけば、いずれ景気や企業業績にも影響が出てくることが懸念されます。このように考えると、今後世界の株式市場が上下いずれに向かうかは、トランプ氏が保護貿易策の手を緩めるのが早いか、それともファンダメンタルズが悪化するのが早いかにかかっているといえます。前者であれば株式市場は上昇、後者であれば下落です。

 

トランプ氏がそう簡単に保護貿易策の手を緩めるとは思えませんが、それでも可能性はあります。ポイントは11月6日の中間選挙です。これから中間選挙にかけてトランプ氏は通商分野のみならず、あらゆる分野で人気取り政策を総動員すると思われます。しかし、中間選挙が終われば、支持率を気にする必要は低下します。次期大統領選の予備選はまだ先です。さすがのトランプ氏もいったん保護貿易策(及びその他の人気取り政策)の手を緩めるのではないかと考えています。投票日直前になって政策を打ち出しても効果は小さいと思われます。よって政策乱発のピークは9月から10月にかけてと予想しています。

 

最後に、以上の想定を踏まえて、株式市場の動きを考えてみます。当面はボックス圏での動きが続くと見ていますが、中間選挙が近づくにつれ、トランプ氏の保護貿易策やその他の人気取り政策の動きが強まることが予想され、これを嫌気して株式市場は軟調に推移すると見ています。しかし、9月から10月にかけて政策乱発がピークを過ぎれば、株式市場は上昇に転じるとの見通しです。

 

 


本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した 情報源からの情報に基づき作成したものです。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。 本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成者の判断に基づくもので、 今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。 投資に関する最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。

PICKUPコンテンツ