門司総一郎のMarket Report  成長戦略のここに注目-外国人労働者受け入れは拡大へ-

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2018/4/20

経済調査部

部長 門司 総一郎

 

はじめに

4月13日に発表された、総務省の人口推計は昨年10月1日時点の外国人人口が初めて200万人を超えたとしています。また法務省による別の統計では、昨年末の在留外国人数は256万人となっています。このように日本に住む外国人は着実に増加していますが、安倍首相は更に積極的に外国人労働者の受け入れを進める姿勢です。今回の「市場のここに注目」は外国人労働者について経済や株式市場の観点から考えてみます。

在留外国人数の推移

外国人労働者の需要は拡大

言うまでもありませんが、外国人労働者数の増加の理由は空前の人手不足です。製造業や外食、小売り、建設など深刻な人手不足に悩む企業は積極的に外国人を受け入れています。例えば居酒屋などの外食チェーンを運営するテンアライドは同社の外国人アルバイトの70%を占めるベトナム人アルバイトのため、ベトナム語の業務マニュアルを整備するなどの外国人(ベトナム人)採用拡大策を進め、昨年は初めて社員としても採用しました。

政府の動きと今後の成長戦略

政府も外国人労働者の受け入れ拡大を後押しする方針ですが、その1つが、新しい在留資格の創設です。日本で働く外国人は何らかの在留資格のもとで働いていますが、その1つに、技能実習制度があります。これは農業や建設などの技能を学びながら、研修の一環として働くというものです。そのため5年の研修期間が終了すると帰国しなければならず、結果的に実習生を育てた雇用主や、もっと日本で働きたい外国人にとっては、中途半端なものになっていました。

こうした問題点解消のため、政府は新しく「特定技能(仮称)」の創設を検討しています。この資格を取得すると、更に5年間の就労が認められ、待遇もよくなることから、政府は「少なくとも年間数万人は外国人労働者が増える(日本経済新聞、4月12日付)」と期待しているそうです。この新制度について、政府は早ければ今秋の臨時国会での法改正を目指しています。

外国人を受け入れる環境の改善も急務です。企業が外国人を雇用する場合、その企業は厚生労働省(以下、厚労省)に届けを提出し、外国人労働者の社会保障の費用を負担しなければなりませんが、この負担を回避しようと、企業が届け出を怠っている可能性があることが疑われています。こうした不正を防ぐため、政府は冒頭で紹介した総務省(元のデータは厚労省)と法務省のデータを照合し、実態をより正確に把握することで、意図的な届け出漏れをなくす方針です。

こうした施策に留まらず、安倍首相は外国人労働者受け入れの包括的な見直しを目指しています。首相の指示を受けて、菅官房長官と上川法務大臣を中心とした検討チームが、先ほどの実態把握の強化を含む対応策を6月の成長戦略に盛り込む予定です。

 

外国人労働者の受け入れは株式市場にプラス

空前の人手不足は賃金の増加などを通じて企業業績に影響を与えています。外国人労働者受け入れの拡大により、人手不足を多少なりとも解消できれば業績にはプラスとなり、株式市場にもプラスとなるでしょう。それ以上に重要なのは、外国人、特に年金やソブリン・ウェルスファンドなどの長期の投資家への影響です。こうした投資家は投資期間が長いため、目先の為替レートなどよりも人口問題など長期的、構造的なテーマに関心を持ちます。したがって、今回の安倍首相の外国人受け入れ策がそうした投資家の日本への見方を変えることもあるかもしれません。以上のような理由から、安倍首相の外国人労働者の受け入れ策に注目しています。

 


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