門司総一郎のMarket Report トランプ米大統領のここに注目-山場を迎える通商交渉-

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2018/5/22

経済調査部

部長 門司 総一郎

はじめに

通商政策はトランプ大統領が最も力を入れている分野の1つです。昨年8月には北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し交渉を開始。更に今年に入ってからは鉄鋼・アルミニウムの輸入に追加関税を課すなど、保護主義的な施策を打ち出しました。

現在米国はこれらの措置を取引材料に貿易不均衡の是正について、他国と交渉中ですが、この交渉は5月から6月にかけ、相次いで事実上の期限を迎えます。今回の「市場のここに注目」は、米国が抱える主な通商交渉について見てみます。

 

トランプ政権が抱える主な通商交渉

NAFTA見直しは時間切れ

一足先に時間切れを迎えたのが、NAFTAの見直し交渉です。米国では他国との条約の改変については議会の承認が必要ですが、11月には中間選挙が控えており、そこでは共和党が下院で過半数を失う可能性が指摘されていました。

そのため、トランプ氏は選挙戦が本格化する前の5月中旬までに交渉を決着させ、現在の議会の承認を取り付けようと考えていました。そのための期限が5月17日だったのですが、この日も合意できなかったため、時間切れとなりました。

今後も交渉は続くと思われますが、しばらくは大きな動きはなさそうです。トランプ氏にとっては黒星ですが、どういう形にしても決着すれば、自動車メーカーにとってコスト増と見られていたため、株式市場にとってはベストの結果といえます。

鉄鋼・アルミニウム輸入の関税への対応はまちまち

次いで期限を迎えるのが、鉄鋼・アルミニウム関税に関する欧州連合(EU)との交渉です。6月1日が事実上の期限とされています。ユンケル欧州委員長は関税の免除を条件に米国との貿易不均衡是正交渉に応じる姿勢を見せています。しかし一方で米国がイランとの核合意から離脱したことについては、反発が強まっており、ユンケル発言の線で決着するかどうかは不明です。

なお、この問題についてのアジア各国の対応は中国(米国の関税引き上げに対して報復措置を発動)、韓国(米国の求めに応じて2国間の自由貿易協定(FTA)を見直し)、日本 (追加関税を容認)と三者三様です。

対中交渉

もっとも注目されるのは米国と中国の交渉です。これは関税などの交渉に止まらず、中国の携帯電話メーカーへの米国の制裁や中国の産業政策である「中国2025」の取り扱いなども対象となっており、一朝一夕に結論が出るものではありません。ただこのまま何の進展もなければ、米国は6月には制裁関税を発動すると見られているため、これを思いとどまらせるだけの交渉の進展があるかどうかがポイントです。

株式市場への影響

日米欧の株式市場は2月から3月にかけて下落したものの、その後は回復基調にありました。この株価の上昇に関しては、通商問題で大きな悪材料がなかったことも、理由の1つと考えています。しかし、今後は各種交渉の結果次第で、株式市場は上下いずれにも大きく振れる可能性があることに注意が必要でしょう。

通商問題でもう1つ注目されるのが、5月11日の「輸入車に対して20%の関税や厳しい排ガス規制を課す」(日本経済新聞、5月14日付夕刊)とのトランプ氏の発言です。これが実現すれば世界の自動車メーカーの業績への影響は大きいと思われます。今のところ自動車株の株価に大きな影響は出ていませんが、有言実行のトランプ氏だけに楽観は禁物です。

日本の株式市場は3月下旬から上昇を続けてきましたが、以上を踏まえて目先は上昇は一服、しばらくは調整局面と考えています。

 

 


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