門司総一郎のMarket Report トランプ米大統領のここに注目-政策リスクと株式市場-

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2018/5/28

経済調査部

 

日経平均株価の推移

はじめに

トランプ米大統領が自動車の輸入に対する追加関税の検討に入ったとの報道を受け、このところ落ち着いていた貿易戦争への警戒感が再浮上し、世界的な株安の一因となりました。今回の「市場のここに注目」は、自動車関税を含むトランプ氏の政策リスクとその株式市場への影響について考えてみます。

 

トランプ氏が自動車関税に言及したのは、5月11日(現地時間)のことです。ウォール・ストリート・ジャーナルは、トランプ米大統領が自動車メーカー幹部と会談し、輸入車に対して20%の関税や厳しい排ガス規制を課すことを提案した、と報じています。しかし、こうした報道があったにもかかわらず、最近まで自動車株が大きく売られることはありませんでした。市場参加者はトランプ氏を甘く見ていたようです。

 

成果の出ない通商交渉

そもそもトランプ氏が今回のような新たな人気取り政策を打ち出すことは想定外のことではありません。現時点でのトランプ氏の最重要課題は、11月に控える中間選挙での与党勝利です。そのために今年に入って、ここまで通商分野で色々動いてきましたが、今のところ成果らしい成果は韓国との自由貿易協定(FTA)の見直しだけです。期待された北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しは、あと一歩で時間切れとなり(注:明確な期限がある訳ではありませんが、今の議会の承認を得るためには5月17日までにカナダとメキシコの合意を取り付ける必要があり、これが事実上の期限と見なされていました)、中国との交渉も実効性のある結果を得られないまま協議継続となっています。

 

6月1日には鉄鋼・アルミニウム関税の適用免除に関する欧州連合(EU)との交渉が期限を迎えます。ここで譲歩を引き出せればよいのですが、米国のイラン核開発合意離脱の結果、欧州企業が米国の制裁対象となる可能性が浮上した場合、欧州で反米機運が高まっていることを考えると、EUから譲歩を引き出すのは難しそうです。こうした状況において、トランプ氏が追加の人気取り政策を打ち出しても何ら不思議はないと思います。それが自動車関税だったということに過ぎません。

 

もっともこの自動車関税は正式決定の前にその影響などの調査が必要になります。鉄鋼・アルミニウム関税の時は調査に1年近くかかったとのことなので、今回の自動車関税に関する調査は11月の中間選挙には間に合いません。したがって今後更にトランプ氏が人気取り政策を打ち出し、それが株式市場の重石となる可能性は考えておくべきだと思います。

 

その場合に打ち出される政策は通商分野とは限りません。当然他分野も対象になりますが、4月13日付当コラム「トランプ米大統領のここに注目②-予想される人気取り政策-」では減税、インフラ投資、外交、企業バッシングの4つの分野について、想定される人気取り政策や、その株式市場への影響を分析しています。ご参照いただければ幸いです。

 

株式市場はボックス圏から上昇へ

以上のように、今後もトランプ氏から様々な施策が打ち出され、それが株式市場の重石になる可能性があるため、世界の株式市場は当面ボックス圏で推移すると見ています。ただしトランプ氏の人気取り政策ラッシュは、中間選挙に先立つ9月から10月にかけピークを迎えると想定しており、政策リスクもその後低下すると考えています。以上を踏まえると、当面の株式市場はボックス圏内の動きと予想していますが、9月から10月にかけて上昇に転じるとの見通しです。

 

 

(ご参考)

市場のここに注目:「トランプ大統領のここに注目-ファンダメンタルズVSトランプ-」(4月5日)

市場のここに注目:「トランプ大統領のここに注目②-予想される人気取り政策-」(4月13日)

市場のここに注目:「トランプ大統領のここに注目-山場を迎える通商交渉-」(5月22日)

 


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