門司総一郎のMarket Report  トランプ米大統領のここに注目-米中交渉は決着へ-

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2018/6/12

経済調査部

シニア・エコノミスト

門司 総一郎

はじめに

前回の当コラム「米追加関税は早期撤廃か?」(2018年6月5日付)では米国の鉄鋼・アルミニウム輸入に対する追加関税が早期に撤廃される可能性を指摘しましたが、その際米中交渉や自動車関税などについても最近進展が見られる、あるいはそれほど懸念する必要はない、と述べました。今回の市場のここに注目では米中交渉を取り上げます。

米中の通商交渉における問題点

米中交渉の核心は米国の貿易赤字削減ですが、各論としては以下のような問題があります。

  • 鉄鋼・アルミニウム輸入の追加関税
  • 知的財産権侵害を理由とした米国による報復関税
  • 中国の通信機器メーカー中興通訊(以下、ZTE)に対する米国の制裁見直し

今回は、この中で最近大きな動きがあったZTEの制裁問題を見てみます。

ZTEの制裁見直しと中国の提案

ZTEはスマートフォンなどの通信機器メーカーで中国を代表するハイテク企業の1つとされています。しかし、イランや北朝鮮との違法な取引などにより、今年4月に米政府の制裁を受け、今後7年間にわたって米企業との取引を禁止されました。これにより米企業から部品を調達できなくなったZTEは生産停止に追い込まれ、経営難に陥りましたが、この制裁は6月7日に見直され、最大14億米ドルの罰金や経営陣の刷新などを条件に、米商務省はZTEに米企業との取引再開を認めました。なおZTEの制裁見直しには中国政府が手を尽くした模様で、トランプ氏はこの件について「習近平国家主席から直接頼まれた案件だ。」と明かしています。

 

もう1つ注目されるのが、米国の赤字削減に向けた中国からの提案です。6月5日のウォール・ストリート・ジャーナルは「中国が(報復)関税措置の破棄を条件に米国から700億米ドル近い農産物やエネルギー製品を輸入することを提案した。」と報じました。年700億米ドル規模となると、3年ほどで米国が求めている2,000億米ドルの赤字削減を達成できることになります。

収束に向かい始めた米中交渉

この2つの動きを見ると、米中交渉は既に収束に向かいつつあるように見えます。米国がZTEの件で譲歩し(といっても巨額の罰金支払いなどがありますが)、中国は年700億米ドル相当の米国からの輸入増により、赤字削減に協力、それに対して米国は制裁関税を見送るとの図式です。これで決着する可能性はかなり高いと考えています。

 

このタイミングで収束に向かい始めたことについては、米中それぞれに思惑があると考えています。米国(トランプ氏)としては、中間選挙が佳境に差し掛かり、選挙戦でアピールできる実績の1つとして、中国による米国からの輸入拡大は最適だと考えられます。また中国としては、米国の制裁関税の最終案の発表期限(6月15日)が迫っており、早ければ今週中に関税発動の可能性があることから、合意を急がなければならないという事情があります。このような米中双方の思惑が、交渉が収束に向かい始めた理由であると考えています。

米中交渉の収束は株式市場にプラス

先日のG7(日米欧主要7カ国首脳会議)が物別れに終わったことなどから、市場では引き続き通商政策がリスク要因であるとの見方が多いと思います。それだけに、もし米中交渉がいったんの収束を見れば、日本を含む世界の株式市場にとって大きなプラスになると予想しています。ただ、最終的な決着ではないので、次期大統領選の予備選の頃には懸念が再燃する可能性は残りますが、今年に入ってからのボックス圏から株式市場が抜け出すためには充分な材料であると考えています。

 


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