門司総一郎のMarket Report バリュエーションのここに注目 -PER低下の主因はトランプ氏の通商政策-

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2018/6/27

経済調査部

シニア・エコノミスト

門司 総一郎

 

はじめに

最近世界の主要株式市場で株価収益率(PER)の低下が見られます。それまで上昇を続けていた日本、アメリカ、イギリス、ドイツのPERは、昨年末をピークに低下に転じました。今回の「市場のここに注目」はこのPERの低下について考えてみます。

PERは(株価÷1株当たり利益)で算出されるので、PERの低下は利益の減少以上に株価が下落する、または利益の増加ほど株価が上昇しないことを意味します。いずれにしても投資家が株式に魅力を感じていないことになります。

薄らぐ金利とPERの関係

一般には、PERの水準は金利で決まると考えられているようです。これは株式と債券を比較した場合、金利が上昇すれば債券の魅力度が高まり、資金が株式から債券にシフトするためPERが低下、逆に金利が低下すると債券の魅力度も低下し、資金が債券から株式に資金がシフトするためPERは上昇するとの考え方に基づくものですが、最近はあまり機能していないように見えます。

2005年から2010年にかけて米国の10年債利回りは大きく低下しましたが、この間主要国のPERは上昇するどころか逆に低下しました。また米国の10年債利回りは2015年以降上昇に転じていますが、PERは緩やかながら上昇を続け、下落したのは2018年に入ってからです。こうした点を踏まえて、足元のPERの低下には、金利以外の要因が働いていると考えています。

 

主要国予想PER

理由は政策の不透明感

筆者がその理由として考えているのが、トランプ米大統領の政策に関する不透明感です。ご存知のようにトランプ氏は、今年に入って次々と保護貿易策を打ち出していますが、各国も報復関税などで対抗し、貿易戦争の様相を呈しています。このまま行けば景気や企業業績に大きな悪影響が生じることも懸念されます。株式市場は不確実性を嫌うといわれますが、トランプ氏の政策やその影響に伴う不透明感がPER低下の原因と考えています。

 

ただし、まだ景気や企業業績など実態が悪化しているわけではないため、不透明感が払しょくされれば、株式市場が一気に大幅高となる可能性もあります。不透明感を払しょく出来るシナリオはいくつか考えられますが、この点についてはまた改めて述べさせていただきます。

 

 


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