門司総一郎のMarket Report FIFAワールドカップのここに注目-西野采配と日本企業復活の共通点-

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2018/7/2

経済調査部

シニア・エコノミスト

門司 総一郎

 

はじめに

2017年12月11日付当コラム「2018年はここに注目!-2018年の10サプライズ-」では、今年予想されるサプライズ(一般には予想されていないが、筆者は予想している事象)の1つとして、 「FIFAワールドカップ(以下、W杯)で日本が初のベスト8進出」を挙げました。大会直前の日本代表は親善試合は不振、監督も更迭される有様で、先行きを心配していましたが、開始後はそれまでの不振がうその様な戦いぶりで決勝トーナメント進出を決めました。ベスト8へのハードルは依然高いものの、一応の格好はついたということで、筆者も胸をなでおろしています。

ところで、今回のW杯で注目を集めているのが日本代表の西野朗監督です。大胆な選手起用や、試合に敗れながらもフェアプレーポイントの差で決めた決勝トーナメントへの進出などが話題になっています。実はこの西野采配にはリーマン・ショック以降低迷していた日本企業の復活と共通する点がいくつかあります。今回の「市場のここに注目」は西野采配と日本企業の復活の共通点を紹介します。

経営者の姿勢の変化が日本企業復活の背景

図

上の表は筆者がプレゼンテーションで使用するスライドですが、リーマン・ショック以降の低迷から日本企業が復活した理由は経営目標、リスクテーク、意思決定プロセスの3つにおける企業経営者の姿勢の変化にあるというものです。以下、この点について簡単にコメントします。

この変化をもたらした原因の1つは安倍政権のガバナンス強化です。ガバナンス強化により企業は自己資本利益率(ROE)や総資産利益率(ROA)などを経営目標として提示することを義務付けられることになりましたが、いずれも利益に関連した指標です。企業は以前のような売上/シェア重視からの転換を余儀なくされることになりました。

利益目標を達成するためにはリスクを取らねばなりません。企業はM&Aなどリスクを伴う手法を積極的に採用するようになりましたが、M&Aなどにおいては意思決定にスピードが要求されます。その結果、企業の意思決定プロセスはボトムアップ型からトップダウン型に変化するようになりました。最近の日本企業の好調な業績は、この3つの経営姿勢の変化によるものと考えていますが、これらは西野ジャパンにも共通するものです。

結果に徹する西野ジャパン

前回ブラジルW杯の日本代表について元日本代表監督の岡田武史氏は日本経済新聞とのインタビューで、「(ザッケローニ元監督は)いいチームをつくったと今でも思っている」(6月15日付日経)としながらも、「4年前の問題は勝負に徹しきれなかったことだろう。自分たちのサッカーがやれたら負けても構わない、という美学や哲学を優先させるような、ウイニングマインドに問題があったと思う」(同)と指摘しています。これは企業でいえば利益よりもそれ以外の物を優先してしまったということになります。しかし、西野監督が一貫して結果にこだわっていることは明らかです。

リスクテークについても同様です。特に第3戦では思い切った采配を見せました。このことが、マスコミの間では「勝負師」や「ばくちをうった」などと言われていますが、私は西野監督があくまでも決勝トーナメント進出の可能性が高い方を選んだだけであって、決してばくちとは考えていないと思います。トップダウンについても、第3戦での決断はいい意味でのトップダウン (思いつきではなく熟考されたトップダウン)の典型であると考えています。

進化する日本代表と日本企業

今回の日本代表の変貌は西野監督により突然もたらされたものではないと考えています。先ほどの岡田氏も自ら日本代表を率いた南アフリカ大会では、開幕直前に戦術や選手起用の大胆な変更を決断していることを考えると、大きな流れの中での進化と呼べるものだと考えています。この進化が続けば、今回は難しくともいずれはベスト8進出が期待できそうです。また日本企業の経営についても同様に、現在は進化の途中であり、今後の成長が期待できるものと考えています。

なお、経験上当コラムが応援すると、応援されたチームが負けることが多いので、今回応援に該当しそうな発言は控えさせていただいております。ご理解下さいますよう、お願いいたします。

 

 

 


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