門司総一郎のMarket Report トランプ米大統領のここに注目-米国の制裁関税発動-

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2018/7/6

経済調査部 

シニア・エコノミスト

門司 総一郎

 

はじめに

米国が対中制裁関税の発動期日としている7月6日が迫ってきたことを受けて、金融市場では株式や新興国通貨などのリスク資産が弱含みとなっています。今回の「市場のここに注目」はこの米国の対中制裁関税を取り上げます。

 

加熱する米中の報復合戦

今回発動予定の制裁関税は米国の通商法301条に基づき、中国による米国の知的財産権侵害を理由とするものです。内容は合計約500億米ドルの中国からの輸入に対し、2回に分けてそれぞれ25%の追加関税を課すというものです。7月6日に第1弾として、約340億米ドルの輸入を対象に制裁関税が発動されることになっています(第2弾の開始時期は不明です)。

 

話はこれだけに止まりません。米国の制裁関税発表に対し、中国も同額の米国産品に報復関税を課すことを表明しました。すると今度はトランプ氏が更なる対抗措置として、2,000億米ドルの中国からの輸入に対して10%の追加制裁関税を課すよう米通商代表部(USTR)に命じました。まだ発動されていない制裁関税への報復措置に、更に追加制裁を予告するというややこしい状況になっていますが、もちろんこの2,000億米ドルの追加制裁に対しても中国は報復を表明しており、各種関税の対象になる輸入の規模は米中合わせて5,000億米ドルまで膨れ上がっています。

 

追加制裁は米景気に悪影響

 問題はこの制裁関税・報復関税がどこまで実施されるかです。トランプ氏のことだけに、何があるかわかりませんが、ここでは比較的可能性が高いと考えているシナリオを1つ紹介しておきます。ポイントは景気やインフレへの影響です。米中双方が表明している500億米ドルの制裁及び報復関税が米国の景気やインフレに与える影響については限定的との見方が多いようです。これは500億米ドルという金額が「中国の2017年の輸出額の2.2%、米国の2017年の輸出額の2.1%に過ぎず、マクロ経済上のインパクトは限定的」(野村證券、吉本元シニアエコノミスト)と見られるためです。また米国の対中制裁品目は「消費財を入れず、代替可能(米国産ないし他国産)な品目に絞っており、米国内でインフレを引き起こさないよう配慮している」との指摘もあります。しかし、ここに2,000億米ドルの追加制裁関税が加わった場合、さすがに影響は軽微とはいえないでしょう。

 

この場合、「消費財や代替不可能な品目も含めざるを得ないと見られ、(中略)輸入インフレなどの負の影響を米国経済に与えかねない」とその影響が懸念されています。こうなれば中間選挙を控えたトランプ氏にとっては逆効果ということになります。このように考えると、当初の制裁関税 (対象金額計約500億米ドル)は発動の可能性があったとしても、2,000億米ドルの追加制裁関税については、少なくとも今回は見送る、というシナリオが比較的実現する可能性が高いと見ています。市場でもこれを本線と見ている向きが多いと思います。

いったんはリスク・オンへ

このシナリオに近い形で、今回2,000億米ドルの追加制裁が発動されなければ、下落しているリスク資産の価格はいったん持ち直すと考えていますが、完全な決着からは程遠い状況です。次回はどのような状況になれば、貿易戦争がピークを越えるのかについて考えてみます。

 

※参考文献:2018年6月19日付『NOMURA 政治レポート(吉本元 シニアエコノミスト著)』

 

 


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