トランプ米大統領のここに注目 -非常事態宣言後の米国の政治情勢と世界の金融市場-

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2019/2/27

経済調査部

シニア・エコノミスト

門司 総一郎

 

はじめに

2月15日に米大統領のトランプ氏は2019会計年度(2018年10月から2019年9月まで)の予算案に署名するとともに、米国・メキシコ国境の移民流入問題を受けて非常事態にあることを宣言しました。予算が成立したことにより連邦政府が再度閉鎖される可能性はほぼなくなりましたが、今度は非常事態宣言を巡って様々な問題が生じることになりました。今回は非常事態宣言後の米国がどうなるかについて検討します。

非常事態宣言とは

米国の非常事態宣言は、一般に戦争、内乱、大規模な災害、疫病の発生などで政府が機能しない恐れがある場合に、大統領に超法規的な権限を認める制度と解釈されているようです。具体的にどういった場合に、どういった権限が許されるのか明示されているわけではありません。

トランプ氏の非常事態宣言の狙い

トランプ氏は主要な公約の1つとして、米国とメキシコ国境における壁の建設を目指していましたが、民主党の抵抗によって必要な資金を確保できずにいました。そのためトランプ氏は非常事態を宣言し、これにより資金を確保するという奇策に出ました。これがトランプ氏の非常事態宣言の狙いです。トランプ氏は国防総省などの予算を転用することにより、壁建設の財源を確保すると見られています。

非常事態宣言の問題点

しかし、これで建設が可能になるかというとそう簡単ではありません。法的にトランプ氏がクリアしなければならない問題は少なくとも2つあります。1つは現在のメキシコ国境の情勢が非常事態と認められるか、もう1つは議会が認めた予算を非常事態を理由に大統領が変更できるか、という点です。特に2つ目については、「予算の策定については議会に与えられた権利である」と憲法で定められていることから、今回のトランプ氏の措置は憲法違反であるとの指摘も出ています。

政治の不安定化リスク

この他に、大統領の権限が強くなりすぎることを懸念する声もあります。今回の予算組み替えを認めてしまった場合、“大統領は非常事態宣言をすれば何でもできる”ということになりかねません。極論を言えば、銃規制や移民受け入れなど国論を二分するようなテーマでも、大統領の裁量次第で制度を簡単に変更できる可能性が出てきてしまいます。これは望ましいこととは言えないでしょう。

舞台は裁判所へ

既にいくつかの州政府や人権団体が今回のトランプ氏の措置を違憲として裁判所に訴えることを表明しました。連邦裁判所の大陪審まで行くことが予想されており、最終決定まで時間がかかると見られています。

ただ、大統領の権限が強くなりすぎる問題などについては共和党議員の間でも反対の動きがあるようで、トランプ氏の奇策が認められる可能性は低いと予想しています。

金融市場への影響

最後に金融市場への影響について考えてみます。当コラムでは基本的にトランプ氏の求心力が低下する場合に金融市場はリスク・オンになると考えているため、壁建設がもし認められなければ米株高、認められれば米株安になると予想します。

勝者はメキシコ?

一方、トランプ氏の主張が認められ壁が建設されることになった場合は、壁建設の経済効果に注意する必要があります。建設に必要なセメントや労働者をメキシコから調達する可能性も考えられるためです。もしそうなれば、“壁建設問題の実質的な勝者はメキシコ”ということもあり得るかもしれません。

 


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